home

ミステリの祭典

login
すばらしい新世界

作家 オルダス・ハクスリー
出版日1966年01月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 虫暮部
(2022/11/10 12:23登録)
 ぶっ飛んだ世界設定が素晴らしい。バーナードは異分子としては些か小物で先行き不安だったが、半ばあたりで新キャラクターが投入され一気に盛り返す。彼も古典文学に毒された変な奴。世界統制官とのディベートは圧巻。読んで面白いディストピアはやはりこれだね。

 ところで、本作は早川書房の世界SF全集に、ジョージ・オーウェル『一九八四年』とカップリングで収録されたりしているが、この2作って混ぜるな危険と言うか、共にディストピア小説の古典とはいえ発想が逆方向。オーウェルは先生に反抗したくてあんなふうに書いたのでは。いや、本来そんな比較する必要など無いんだけど、ついしてしまう、ありがた迷惑な企画なのである。

No.1 7点 斎藤警部
(2020/04/28 18:56登録)
「快適さなんて欲しくない。欲しいのは神です。詩です。本物の危険です。自由です。美徳です。そして罪悪です。」

本作のメイントリック(??)、と呼びたくなる安定社会の創造メソッド、これぞ逆転の発想!! 。。。 ところが、事故は起きる。。おかげでこの物語は存在した。。。あれ!? これはシンプルでもナイーヴでもない逆説の物語、いや、むしろ逆説なんかじゃあないんじゃないか!? 個人的に(終結間近までは)ただただエンタメ書として愉しめました。まるで作者の意図を飛び抜けて、本作中の世界統制官共にまんまと誑し込まれたようだ(った)。。。。???  地球社会の基盤がとても二十六世紀中葉に見えずフューチャーノスタルジアに浸れないのは残念だが、そこが却って良い。しかしその頃はデーモン小暮も十万六百歳近くなってるのか、生きてれば。 作者自身も後年語っている様だが、やや若書きというか、”ジョン”や”バーナード”を始め主要登場人物の辿る道にもう少し選択肢の幅の陰影が染み渡っていても良かったかな。そこを犠牲にした代わりに、この重く心を揺らす印象深いラストシーンが生まれたのかも知れないが。。でもそこで天下の奇書になり損ねた、業の深過ぎる涙の書になり損ねた感はある。 “チャリングT”には笑ったがちょっとしつこい。 シェイクの引用やたらに頻繁(表題も)。 ブラッドベリの短篇で、たしかポオの諸作や何やらと並び”禁書”として羅列されてた本ですね。 ジョージ・オーウェルが、上流出身たる著者の教え子だったそうですね、イートン校で。 新型コロナウイルス支配下の世で読むと余計に沁みるような気がする箇所が、いくつもありました。

“沈黙があった。悲しいにもかかわらず ーー いや、悲しいからこそ。というのは、悲しみは三人が互いのことを大事な友達だと思っている証拠だからだ。三人は幸福な気分だった。”

2レコード表示中です 書評