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ミステリの祭典

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甘い毒
ビール主任警部

作家 ルーパート・ペニー
出版日1997年01月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 7点 ことは
(2022/09/11 01:09登録)
いくつかのネット評などをみて、解決部分以外は読みづらいのかなと構えていたが、杞憂だった。会話主体の文章で、キャラクターもきっちり書き分けられ、ストレスなく読める。
第1部では、進行形でチョコレートの盗難/廃棄事件と、関係者の人間関係、過去の事件の説明などが淀みなくすすみ、不穏な空気が感じられるなか、一旦調査は終了する。第2部で事件がおきるが、ここでも事件は証言として伝えられて、会話が主体なので、スムーズに状況理解できる。終盤、ある事実が判明して、そこからいくつが重要事実が証言され、「幕間」を挟んで、解決編に一気になだれ込む。飽きさせない構成だった。
判明する事件の構図は、ありがちかもしれないが、かなり好き。
また、解決編であげられる「ありえないこと」は、「たしかに」と思わされるもので、そこから展開される推理は(唯一とはいわないが)実に説得力がある。クイーンの初期作と比べると、推理の意外性も、推理の強度もすくないが、”読者への挑戦”があることを納得するだけの説得力はある。
全体として、確かに、キャラクターの描き込みは深くなく、主人公の個性も乏しい。ドラマ的な盛り上げも少ないので、小説にドラマを求める人とか、ミステリ的ガジェットを求める人とかには、面白みは少ないのかもしれない。
しかし、「謎とその解決」を(段取りも含めて)楽しめる人ならば、楽しめるだろう。私は、シンプルに「謎とその解決」だけになっていることに、かえって好感をもった。
クラッシックな謎解きミステリの佳作として、おすすめできる。

No.2 4点 mini
(2013/11/01 09:54登録)
先日に論創社からルーパート・ペニー「警官の騎士道」が刊行された
ルーパート・ペニーは出版社に翻訳要望を掲げる本格オタクな方々がよく名前を挙げる作家の1人だ、まぁその手の人種にはよく名前が出てくる作家と、純粋な本格派なのに全く名前を挙げない作家名が有るが、両グループの作家名リストを書くのも面倒だからまたの機会に

ペニーは全作ビール主任警部シリーズの計8作しかなく、その中で翻訳刊行されたのは今回の「警官の騎士道」を入れて3作
しかしその3作は例の森事典でも代表作的に挙げられているものばかりで結構厳選されて翻訳されてるんだなと分かる、「警官の騎士道」は初期を代表する密室ものらしい
同じ論創社から以前刊行された中期作「警官の証言」も密室もので、つまり訳された3作中2作が密室ものという事になる
一番先に国書刊行会から出た後期作「甘い毒」は密室絡みでは全く無く、毒殺事件を扱ったオーソドックスなフーダニットである
いや本当にオーソドックスで、ちょっとアマチュア書きみたいな謎と手掛りの提示がなされており、正直言って技巧的に上手い作家とは思えなかった
ホワイダニットやハウダニットがあまり好きじゃなくて、純粋な犯人当てだけを楽しみたい読者には向いていると思う
逆にフーダニット以外の要素も求める読者にはひたすら退屈だろう

No.1 6点 江守森江
(2010/02/16 12:20登録)
エラリー・クイーン以外の海外・読者挑戦物は、ほぼマイナーで翻訳された作品が少ない。
それでも、蔵書検索で6作品チェックしたので順次読破する予定。
作者は、書いた全8冊が読者挑戦物らしいので全部翻訳される事を期待したい。
第一弾は、バレンタイン・デーに貰ったチョコを食べながらチョコレート毒殺事件がメインのこの作品を読むことにした。
時代背景・英国の風習に翻訳特有の読み難さがあり、加えて状況説明に終始する感のある第一部に、途中で投げ出したくなった。
更に、第二部での毒殺事件も実に地味で坦々としている。
しかし、そこに狙いと「陰の伏線」を潜ませる手際は見事で、読者挑戦物に相応しくロジカルかつシンプルに紐解かれる解決編は鮮やか。
但し、純粋なパズラー過ぎて、ミステリに小説を求める方には合わないと断言出来る。
※私的には嗜好のド真ん中だが翻訳特有の読み難さと相殺して6点にした。

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