拳銃を持つヴィーナス |
---|
作家 | ギャビン・ライアル |
---|---|
出版日 | 1977年04月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 6点 | 斎藤警部 | |
(2021/05/07 06:54登録) このタイトルは何かor誰かの隠喩か??.. という疑惑と興味に引っ張られちまうのがミソ。 ユーモアと心理的冒険を両輪に、所々HB式描写もある(これが地味にイイ)。銃撃などアクションシーンは控えめ。主人公が銃器骨董商なだけあって、銃そのものへの愛着や蘊蓄はこってり。とにかくユーモア充溢な事もあり、途中からすっかり軟派なラブコメタッチに流れっぱなしかと思ったが。。。ま、ラストシーンはこれで良しだべ?決して格好良くもなければ男の琴線に触れて仕方ないわけでもないが、その前の女の台詞の印象深さにかなり助けられてるって構造かな。。 絵画密輸のサスペンスがもっと強く締め付けてくれたら良かったし、記憶喪失に纏わるホワットダニット乃至ハウダニットんとこ、折角のミステリ核心部分なんだから、もう少し粘っこく解き明かしてくれてもよかった。明かされる人物相関図、事件全体像はさほど熱くもなければ、意外性でぶん殴られる程でも、機微が滲みる類でもない。ヒーロー性が薄く、ピカレスクでもジゴロでもない、ちょっとぬるい主人公(そのくせ最後に唐突な名探偵気取り!)。ヒロインには言うまでもなく、チョイ役の筈の巨漢醜男ビジネスマンにも喰われてませんかね。 とは言え台所で武器を造る共同作業シーンなどほとんど歴史的に良いし、全体通して充分面白い。けど何かしらピリッとしないんだな、ライアルさんへの期待値が邪魔をして。 まあでも「拳銃」と「絵画」がミステリ興味の核心部分で間違いなく緊密に結び付く、得も言われぬトリッキーさ加減はニヤリとさせてくれた。 “さあ、葉巻に火をつけよう” |
No.1 | 6点 | 空 | |
(2020/05/07 22:57登録) 美術品の密輸をテーマとしているところが、個人的には興味深かった作品です。 例によって一人称形式の主人公は銃器を扱う骨董商で、美術品の密輸も請け負っているという設定です。ルネッサンスから近代まで、何枚もの有名画家の絵が登場します。ただ、デューラーの版画にまつわる国境での検査部分を除くと、密輸が成功するかどうかのサスペンスはほとんどありません。ではアクションはというと、こちらもライアルにしては非常に少ないのです。最初の仕事で主人公が頭を殴られて気絶するところも、そのため直前の記憶を失ってしまうという言い訳のもとに、直接的には描かれません。最後に銃の撃ち合いになるシーンが2回出てきますが、これも他の作品に比べるとあっさりとしたものです。 タイトルは、最後に扱う絵のこと。しかしジョルジョーネにそんな図柄の絵があるとはどうも思えないのですが。 |