home

ミステリの祭典

login
ワースト
漫画

作家 小室孝太郎
出版日1970年01月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 クリスティ再読
(2020/12/09 21:00登録)
つい衝動買い。復刊ドットコムで出た2冊本の「ワースト」には、初連載作の「トライライトゾーン」も併載。ただしオマケの「アウターレックお試し版」はもうついていなかった...これは残念。
「ワースト」は「10年に1回くらい復刊される」イメージがあって、今回の復刊ドットコムの復刊がなくても、入手は超難しい、というわけではない。「トワイライトゾーン」や「アウターレック」の方がずっとレア度は高いんだけどね。今回の「ワースト」復刊では、連載時や今までの刊本の異同をチェックした完全版、ということになり、単行本でオミットされた扉絵なども別途収録し、ジャンプ巻末の著者コメントも収録、と徹底している。

で、内容は漫画では珍しいくらいの本格SF。人類文明の崩壊を描いた終末物なんだけど、「ワースト」という脅威に対して、生き残りの人類が「どう戦うか」が話の軸になっている。最初は謎の雨に打たれて死んだ人々がワーストマンとして蘇るゾンビ系ホラーだが、単に「怖い」だけでない。ワーストマンと戦いつつ生き延び、一旦南の島に逃れて態勢を立て直して、対抗手段を編み出していく展開で、本格的にSFでしかも三世代にわたる大河ドラマになっている。主人公も、野性的なカンで終末の到来を予感する不良青年の鋭二から、鋭二に救われた絆創膏の腕白坊主から成長し、冷徹な科学者になって生き残りの人類グループのリーダーになる卓、その孫の虚無的で反抗的な力へと移り変わっていく。最後の力は特にそうだが、必ずしも主人公がヒーローらしいヒーローでもなく、しかも「人類の終末」のなかで倒れていく。この陰鬱さは、少年マンガの域を軽く超えている。人類の進化をなぞってワーストマンも進化し手ごわくなり、さらに別の「ワースト」氷河期も迫りつつある、そんな「最悪の終末」の暗澹とした物語の中で、力はワーストマンを倒す手がかりを得るが....

この70年代初め、という時期は、マンガに一番アウトローな輝きがあった時代でもある。残酷というならジョージ秋山の「アシュラ」、永井豪だって「ハレンチ大戦争」でおなじみの主人公たちの首が飛び散る。マンガにも「売れ線」だとか営業だとか、売る側の都合とは無関係のマンガ家の「野性」があった。「大学生がマンガを読んで」と眉を顰められた時代であり、それゆえの暗い輝きがあった。この時代ならではの「終末」をテーマにし、終末の到来の中で主人公たちが無慈悲にも倒れる「ワースト」「ザ・ムーン」「デビルマン」という流れを、想定できるのでは...なんて思うのだが、いかがだろうか。

個人的な話だと、子供の頃って、風邪をひくと、食事はケーキでマンガを買ってきてもらえた。確か初めて少年ジャンプを親に買ってもらった号に、この「ワースト」が載っていた。いやそれも、一番のトラウマ回な第11話で、死んでワーストマンと化した鋭二の妻が卓を襲う...そして巨大キノコが街を破壊していくエピソード! 鮮明に記憶していた。ほかに「悪魔くん千年王国」が載ってたのを憶えているが「ハレンチ学園」「男一匹ガキ大将」がどんな話だったかは覚えがない...そんな評者8歳の出会いだった(thanks tider-tigerさん)。

No.1 7点 tider-tiger
(2020/02/26 00:26登録)
~世界中で長く雨が降り続いた。この雨に当たった者はことごとく死んだ。そして、彼らはまったく別の生物『ワースト』として甦った。なぜだか強い不安感に苛まれ廃倉庫の中に隠れていた不良少年、お仕置きで押し入れに閉じ込められていた子供など、雨を完全に避け得た者のみが生き残った。だが、生き残った少数の人間たちの前に人類最悪の敵ワーストが立ちはだかる。~

古いSF漫画です。週刊少年ジャンプに1970年より連載され、ジャンプコミックスで全四巻(オリジナルの書影は三巻しかamazonに登録されていないようです)。人類とワーストの数十年の戦いが主人公を変えながらの三部構成で綴られております。
SFが低く見られていた当時によくぞ頑張って下さいました。今読んでもなかなか楽しめる作品ではないかと思います。子供の頃にはSFである以上にホラーでした。かなり怖かったです。
構成はしっかりしており、Bad→Worse→Worstと事態がどんどん悪化していく筋運びは堅実にして吸引力もあります。人間ドラマあり、驚きあり、記憶に残っているシーンがいくつもあります。
特に印象に残っているのは、母親がワーストと化してしまった少年がその母親を……非常に嫌な気分になりました(性的なものではありません)。その母親を殺してしまったとかの方がまだマシだったように思います。本作は少年漫画から逸脱したところがまま見られます。
※変な誤解を招きかねないので三行上()を追加しました。2020/3/12

以前に書評した『地球最後の男(マシスン)』映画『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』などの系譜に連なる作品であり、二十五年ほど前に登場して世界的にも人気となったゲーム『バイオハザード』にかなり影響を与えた、のではないだろうかと思っています。
※ネットで調べてみたら、少なくともそう感じたのは私だけではなかったようです。

本作が昨年復刊されたことを最近になって知りました。リアルタイムでは読めませんで、昭和ヒトケタ生まれの大叔母の漫画コレクションの中にあったものを小学生の頃に読みました。永井豪の『デビルマン』にも匹敵する強い衝撃と影響を受けた漫画でした。
作者は手塚治虫のアシスタントをしていたそうです。いかにもな部分がけっこうあります。実力はあるのに残念ながら不幸なまんが道を歩んでしまったようです。
現代視点から見ると6点くらいの漫画かなという気もしますが、強い思い入れのある作品なので個人的には8点くらいはつけたい。中間を取って7点とさせて頂きます。

2レコード表示中です 書評