home

ミステリの祭典

login
マーダーズ

作家 長浦京
出版日2019年01月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 パメル
(2023/11/18 06:55登録)
総合商社に勤める阿久津清春は、柚木玲美がストーカーに襲われる場面に遭遇し助けに入るのだが、彼女は彼をわざと巻き込んだのだった。同じ頃、組織犯罪対策五課の則本敦子も彼女にリクルートされていた。
物語がどこへ行こうとしているのか、なかなかわからない。主要な三人組はいずれも後ろ暗いところがある。この訳あり三人組による未解決事件の捜査を中心に展開される。捜査の対象となるのは、殺人犯ながら誰にも知れず、一般社会で普通に生活している者。そして捜査の過程でも同じような未知の殺人者たちと次々に出会っていくことに。清純な美女ながら、目的のためには親しい人々の犠牲も厭わぬ肝の据わった玲美。品行方正な外見とは裏腹に冷酷でヤクザ相手にも動じず、武器も手作りでこしらえてしまう清春。庁内では浮いた存在ながら、捜査能力に長けたハードボイルドな則子。
そしてやがて浮かび上がる正義や善悪の在り方を問う主題。何が正しいのか、正しいことに意味があるのか。頭の中がかき回されながらも続きが読みたくなる。中盤まではスリリングな捜査劇が繰り広げられ、終盤は迫真のバイオレンスアクションで盛り上がり、クライマックスまで昇りつめる。徹頭徹尾、不穏な小説である。

No.1 6点 HORNET
(2020/02/11 16:39登録)
 商社勤務の阿久津清春は、ある夜、ストーカーに襲われていた女を助ける。女は数か月前に合コンで一度会っただけの女性だったが、すぐに自分は尾行されていたのだと勘付く。「尾行していた理由をいえ。いわなきゃ――」と言う阿久津に女はかぶせた。「私も殺す?」――そう、阿久津は過去に、誰にも知られず人を殺していた――。

 大切な人を奪われた復讐に、あるいは自分を守るために過去に殺人を犯しながらも、犯行は発覚せず普通に生活する者たち。そうした者たちに、玲美は十七年前に行方不明となった姉の行方を探すよう依頼する。「従わなければ、あなたたちの犯罪の証拠を公表する」と脅して。およそ現実的ではない劇場的設定だが、まぁ素直に面白い。もと放送作家らしい作風とも言える。
 似たような死亡状況の事件を洗い出し、その関係者を洗い出すうちにつながりが見え、それらをあたっていくうちに真相に近づいていく――という展開もかなりご都合主義なところはあるが(一本の線がすべてアタリ、という流れが)、かといって進んで戻っての現実的な展開があっても冗長になるだけなのでこれはこれでいいのだろう。
 かなりバイオレンスな場面も含め、とにかく映像化に向いているストーリーだと感じた。

2レコード表示中です 書評