ある醜聞(スキャンダル) ブライアン・アーミテージ、チェビオット・バーマン |
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作家 | ベルトン・コッブ |
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出版日 | 2019年12月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 6点 | nukkam | |
(2020/06/09 20:45登録) (ネタバレなしです) ベルトン・コッブ(1892-1971)のシリーズ探偵と言えば40作以上の長編で活躍するチェビオット・バーマンですが、晩年の1965年から1971年にかけてその番外編として5作のブライアン・アーミテージシリーズが書かれました。1969年発表のシリーズ第4作である本書ではアーミテージは警部補で、かつてはバーマンの部下として充実した警官生活をおくっていましたがバーマンは警視正にまで昇りつめて今では直属の上司ではなく、現上司であるバグショー警視との関係は良好ではありません。しかも本書ではバグショーの秘書である女性巡査が墜落死する事件が起き、アーミテージは疑惑の上司を追及するのか忖度(そんたく)して捜査に手心を加えるのか、揺れ動くアーミテージの心情が独特のサスペンスを生み出します。一つ誤ると自分のキャリア台無しですからね。サラリーマン読者の私には大いに共感できる場面がいくつもありました(笑)。脇役ながらバーマンはアーミテージをフォローしてくれます。但しバグショーが無罪だった場合も想定して慎重です。そこがアーミテージは理解できずにちょっとすねているのもよくわかるぞ(笑)。そんなこんなで捜査は難航しますが、犯人を特定するには証拠が十分でない推理に感じられましたが終盤のちょっとしたどんでん返しが効果的で、幕切れも印象的です。本格派推理小説要素のある警察小説としてなかなかの出来栄えだと思います。 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | |
(2020/02/08 05:32登録) (ネタバレなし) 「わたし」ことスコットランド・ヤードの警部補ブライアン・アーミテージは、虫の好かない上司バグショー警視の言動に日々悩まされていた。アーミテージはさる犯罪者を追いつめるが、融通の効かないバグショーに捕縛の好機を邪魔された形になり、やむなく勝手な行動に出た。そんな折、アーミテージはバグショーの美しい若い秘書ペギー・ソーンダーズと偶然に遭遇。どうやら彼女は、休暇中のバグショーと密会してるらしい? だが少ししてそのペギーの墜落死体が崖下で見つかり、バグショーは死亡直前のペギーの軌跡など知らなかったと語る。当初は単に密通を隠すためにバグジョーが虚言を弄しているのだと考えたアーミテージだが、次第に彼の心にはある疑惑が浮かんできた。 1969年の英国作品。唯一の邦訳にしてなかなかの秀作『消えた犠牲(いけにえ)』のベルトン・コッブ、60年目の未訳作の発掘である。論創さん、エライ。 旧クライムクラブや現代推理小説全集に執着のある評者としてはこれはすぐにも読みたかったが、このところおそろしく多忙で(涙)、ようやく今夜、いっきに読了した。 主人公のブライアン・アーミテージは、30代前半とおぼしき青年で、愛妻のキティーも職場結婚の現・部長刑事である。ちなみに訳者あとがきによるとアーミテージは、作者のレギュラー探偵で、本作は4番目の長編。うれしいことに『消えた犠牲』の主役探偵だったチェヴィオット(本書ではチェビオット表記)・バーマンも同じ作品世界を共有し、本作では警視正という立場から新世代の主人公アーミテージを後見する。 紙幅はハードカバーで200ページほど。登場人物は少ないが、章立てが異常に細かい仕様がやや読みにくい。翻訳自体は全体的にスムーズで、特にひっかかる誤植などもない点は好ましい。 物語の序盤は愛妻キティーとの安定した生活を守るため、反りの合わない上司バグジョーに気を使うアーミテージの心労が延々と描かれ、これはそういう縦社会もの的な警察小説なのか? とも思わされた。 とはいえ作者はあの『消えた犠牲』のコッブであり、さらにその未訳長編が山のようにある(巻末リストを参照すると70冊以上)中から、最初にコレが選ばれている、だから、きっと何かあるんでしょ、と思いながらページをめくりつづけることにした。 そうしたら後半、うん、まあ、なかなかトリッキィな作品に化けていく。ラストシーンの描写もかなり鮮烈。 ただし登場人物の少なさと、妙な勢いで書き込まれた(中略)の叙述から、ある程度、先の流れは読めてしまう。その一方で小説的な意味での伏線やツイストなどはともかく、謎解きミステリとしての手がかりは少なめ。それらのプラスマイナスをトータルとして勘案すると、優秀作とホメるまでにはいかない。テクニックの妙は確かに感じさせる、佳作~秀作(まあ)というところ。 ただまあこの作者、まだまだ面白いものは出てきそうな雰囲気もあるので、もうしばらく紹介していってほしい。実際に今度はバーマン主役もののかなり初期編の翻訳が予定されているみたいなので、ちょっと楽しみにしている。 しかし、日本に一冊しか翻訳されてない作家のウン十年ぶりの発掘というのは、その事実だけでなんかワクワクしてくる。いや、発掘・再紹介してほしい不遇な海外ミステリ作家は、邦訳が一冊オンリーの人に限りませんが。 |