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ミステリの祭典

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黙秘犯

作家 翔田寛
出版日2019年08月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 人並由真
(2020/01/19 20:03登録)
(ネタバレなし)
 2019年の夏。千葉県船橋市の住宅街の路上で、大学生の西岡卓也が撲殺された。近隣に住む主婦・小森好美は、現場周辺で女の声と、逃げ去る男の姿を認めた。やがて現場に残されていた凶器の指紋から、二年前に傷害罪を起こして保護観察中の若い板前・倉田忠彦に殺人の嫌疑がかかる。逮捕され、取り調べを受けても黙秘を続ける倉田。捜査を担当する船橋署の面々は、この事件の奥に潜むもっと秘められたものを次第に見やり始めた。

 翔田作品は前にちょっとだけ読んだことのある評者だが、今年の新刊がAmazonのレビューで評判が良いようなので久々に手に取ってみる。
 しかし実際のところの内容は、極めてフツーの警察小説で、まあ水準作~佳作といったところ。
 最後に明かされる真相(タイトルの含意)も実にありふれたものだし、何より逮捕された倉田への尋問の場面がみっちり書かれていないのは、この作品の主題上、ヘンに思える(というよりそもそも、物語の軸として、何がなんでも警察側を××しようとする倉田の姿が十全に書き込まれていないと、この作品は成立しないのではないか?)。

 これは悪い意味で、被疑者の行動の心の謎に重きを置いた、一時間ものの刑事ドラマの筋立てを読まされたような印象。
 まあ、真犯人にトドメをさす決め手となる、ヒラリー・ウォー風の物的証拠だけはちょっと良かったかも(それも良くも悪くも昭和ミステリという感じだが)。
 あと、捜査陣の刑事連中のキャラクターは、そこそこの魅力はあった。

 最後に、平成31年~令和1年の設定のストーリーのはずだが、海水浴場などの監視カメラがいまだに記録媒体としてビデオテープを用いているというのは違和感がある。実際にまだそんな所とかあるんですか?

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