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ミステリの祭典

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悲しみの時計少女

作家 谷山浩子
出版日1991年10月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 8点 メルカトル
(2022/08/14 22:51登録)
いつも時刻を確認していないと落ち着かない“時計中毒患者”の浩子は、横浜元町の喫茶店で魚の目をしたサカナ男と、顔と懐中時計の中身が逆さまになった時計少女に出会った。時計少女の案内で、三人は彼女の住む鎌倉の“時計屋敷”を訪ねることになるが、旅の途中で次々と不可思議な出来事に巻き込まれていく――。

自らが声優をつとめたラジオドラマも好評を博した、谷山浩子のファンタジックミステリー。
Amazon内容紹介より。

これを途中まで読んで、馬鹿馬鹿しいとかくだらないと言う人は結構いるでしょうが、退屈だと言う人はほとんどいないのではないかと思います。私の場合は、何なの一体これは?では生温いので、なんじゃこりゃー!でしょうかね。そして最後に驚愕しない読者はいないですね、多分。帯に綾辻行人が書いている「この作品はまぎれもなく第一級のミステリ―(推理小説)でもある」とはあながち間違いではないと思います。

まさかこのような摩訶不思議なメルヘン(ファンタジー)にあんな仕掛けがあるとは誰も思うまい。誰かに似ている様で誰にも似ていない、作者独自の世界を構築しています。正にブラボーと褒め称えたい気持ちでいっぱいです。読後、暫くこの世界観から抜け出せなかったことを、ここに告白しなければならないでしょう。

No.1 7点 虫暮部
(2019/11/25 13:31登録)
 作者曰く、綾辻行人『時計館の殺人』と本作は“作者同士のアイディアや趣味が混ざりあった結果、兄妹のような関係の作品になりました”。その綾辻行人は推薦文で“同じ「時計屋敷」をモチーフにしたこの作品を読んで、正直なところ打ちのめされてしまった”と吐露。更に、竹本健治が“自宅をカンヅメ会場として提供”と言う微笑ましいエピソードも添付。話半分と考えても素通りは出来まい。
 『時計館の殺人』と通底しているのはロジックやトリックではなくルナティックなエレメント。となれば『霧越邸殺人事件』や『囁き』シリーズにより強い共振を見るべきか。とは言え中村某を髣髴させる人物も登場し不可解な場所を幾つも巡る構成は、館シリーズを駆け足で一冊に凝縮した野心作と言えなくもない、と言っても過言ではないかもしれない。
 実はこの度読み返して小林泰三みたいだと思った。これは両者とも『不思議の国のアリス』の子供だから。但し“サカナの目の男”が『クトゥルー』ネタだと言うのは考え過ぎだろう。サカナはもともと谷山浩子が多用する言葉なのである。

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