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ミステリの祭典

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死後の恋

作家 夢野久作
出版日1976年11月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 みりん
(2023/09/30 15:10登録)
アレを読んでから毎日1度は夢野久作のあの荘厳な尊顔を思い浮かべる時がくる。これが『死後の恋』か…
という冗談はさておき収録作は『死後の恋』『瓶詰の地獄』『悪魔祈祷書』『人の顔』『支那米の袋』『白菊』『いなか、の、じけん』『怪夢』『木魂』『あやかしの鼓』
私が読んだのは新潮文庫の「夢野久作傑作選」なのでどうやら前の方が読んだ作品集とは違うようですがここに書評します。

【ネタバレあります】



『死後の恋』9点 『瓶詰の地獄』9点
この二つはどの作品集にも収録されていますね。『死後の恋』の猟奇と耽美の融合、臓器と宝石の対比がホントに好きで、まだそれほど読んでないのに夢Q中短編の最高作だろうと勝手に思ってます。

『悪魔祈祷書』 6点
タイトルを見るからに著者らしい作品かと思いきや予想外の方向へ。こういうのも書くんだね。

『人の顔』6点 『支那米の袋』7点
既に読んでいましたね。『瓶詰の地獄』で感想書いたのでソチラで

『白菊』5点
幻想的な雰囲気に誘い出される犯罪者と世にも美しい少女。んんん…つまりどういうこと?

『いなか、の、じけん』3点
いなかで起こる少し奇妙な事件が無数に載っているショートショート。吝嗇家なおばさんが窒息する話以外はあまり記憶に残らず

『怪夢』4点
これまた怪しい夢に関するショートショート。『病院』では精神病患者=主人公が発狂すると同時に研究が完成するという研究者が登場するが、これまさにドグマグの原形ですね。ずっと前から構想を練っていたのが伺えます。

『木魂』6点
妻と子を無くし、どこからともなく声が聞こえるという狂人。異常な現象を数学で解釈する部分はユニークです。終始陰鬱、暗澹たる雰囲気が続く中、ラストは一筋の光明が差した…のかどうか 

『あやかしの鼓』はどうせならこれがタイトルになってる作品集で読もうと決意。デビュー作の中編、楽しみですな

未読作で刺さったのが少なくてこの評価に。相変わらず「狂人」「夢」「ロシア」が好きなんですね

No.1 6点 クリスティ再読
(2019/10/08 21:48登録)
夢Q地獄系短編集。この本は社会思想社「異端作家三人傑作選」の1冊で、田村文雄の白目狂女のカバーイラストがグロい。収録は「人の顔」「死後の恋」「鉄槌」「斜坑」「幽霊と推進機」「キチガイ地獄」「押絵の奇蹟」「瓶詰の地獄」。必読有名作も多いけど、前にやったちくま版全集第8巻とやや作品がカブる。仕方ないな。今回マイナー作の「鉄槌」を面白く読んだ。
実父が「悪魔」と罵った株屋の叔父に、父の死後引き取られた主人公は、電話の声から相場をアテる奇妙な才能を発揮して、「悪魔」な叔父にも一目置かれるようになる....父の仇を討つ気もなくて怠惰に雇人を続けていたのだが、叔父は小悪魔的な情婦に篭絡されてその言いなりになってしまった。しかもその情婦は主人公にも粉をかけてくる始末。情婦はどうやら叔父の毒殺を狙っているらしい。主人公はどうするか?
というような話なんだけど、この主人公がきわめて怠惰でヤル気ないのが、いい。このキャラが実に夢Qらしい。「アンチ復讐小説」と言いたくなるような意外な儲け作。
「死後の恋」は浦塩(ウラジオストク)が舞台のグロテスクロマンで有名作。「アナスタシア内親王殿下」とか、そういや湊谷夢吉の漫画作品もここらをネタしてたなあ...(夢Qも70~80年代にガロ系に影響があったよ)
であと中編「押絵の奇蹟」かなあ。これ「ドグラ・マグラ」の中盤あたりの舞台装置に近いし、ウェットな情感でも共通する。「先夫遺伝」ってオカルトがベースにあるけど、小栗虫太郎の「白蟻」もこのネタ。きっとこの時期に流行ったんだろう。

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