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ミステリの祭典

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高校事変
優莉結衣

作家 松岡圭祐
出版日2019年05月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 5点 バード
(2022/02/06 22:01登録)
作者の本は4冊目だが、青春物としての爽やかさは本作でも健在。また、『水鏡推理』に見られた理工系の小ネタも存在し作者の良いところが十分発揮された作品と言えるだろう。
その一方で明確に殺人が扱われたせいか、逆に展開が安っぽい。黒幕の計画は杜撰すぎる上、武装軍団の幹部キャラの知能も終盤で下がりすぎである。松岡さんの作風には殺人事件は合わないんだなあと肌で感じた一作だった。
シリーズ化されてるようだが本作の続きは読まなくていいかな。

No.1 7点 人並由真
(2019/10/06 18:06登録)
(ネタバレなし)
 大規模なテロ犯罪を引き起こし、死刑になった半グレ集団~カルト組織のリーダー、優莉匡太。その次女で、親と組織の幹部から闇世界の戦闘技術をたたき込まれた美少女・優莉結衣は、彼女当人はテロ犯罪に関係ないと主張する人権派弁護士達の支援のもと、川崎市の公立高校・武蔵小杉高校の2年C組に在籍していた。担任の敷島和美から、結衣と友達になってあげてほしいと頼まれた学友の少女・濱林澪は相手の心を開こうとするが、そんな二人をとりまく生徒達の視線は冷ややかだった。そんななか、現職総理の矢幡嘉寿郎が同校を視察。内閣には、同校の生徒でベトナムから帰化した人気バドミントン選手の田代勇次と矢幡を対面させることで国民の支持率を上げようという思惑もあったが、首相の訪問日に謎の武装テロリスト集団が学校を占拠。総理を警護するSPたちは虐殺されて校内は地獄の戦場となる。だが……。

 世間の評判が頗る良い&あっというまにシリーズが第三弾まで出てしまったその勢いに、なんだなんだと興味を惹かれて、まず第一作を読んでみた。

 うん。確かに面白い。スーパー美少女ヒロインの設定そのものはありがちというか和製バリー・ライガだが、しつこいくらいに書き込まれたデティル、パターンで流されそうなアクション&武器火器の描写にイヤミなくらいにツッコミを入れてそれっぽく叙述していく手法など、昭和風に言うなら分厚いステーキ肉的な噛み応えを覚える。
 (終盤、初めて結衣が即妙に使う凶器の描写もステキ。映画やコミックじゃそのまま叙述しても説得力のない凶器で、その辺のリアリティは小説メディアならではだよ。)
 
 それで陰謀の真相、黒幕の正体にはなかなか唸らされました(21世紀の国内のもろもろの社会派テーマも盛り込んだ作者の手際に対しても)が、一方で一歩引いてみるなら黒幕の思うようにここまで順当にコトが運ばなかった可能性も多かったのでは? という気もする。途中で計画の不順に気づいて次の機会に回すには、初動でコストをかけすぎているよね? その辺のプロットの弱さは、やや減点材料か。

 とはいえ肝要の主人公=ヒロインの結衣のキャラクターは決して目新しさはないものの、実に入念に書き込まれて結構いい感じにはなっていると思う。闇の心への志向と一方で共存するそれへの反発の念のバランス取りが、この手のダークヒーロー&ヒロインの魅力のキモだけど、本作の場合は作者が直球で放った剛球がうまい感じにミットに収まっているんじゃないかと。

 しかし本作の一番の驚きは、巻末の解説で書かれているとおり、これ以上ない余韻のあるクロージング、最高級の完結感なのに、しれっとすぐさま続刊が出てしまったことであろう。作家としての大した肺活量じゃ。
 そんなわけで、続編は近くまた読んでみます。 

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