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ミステリの祭典

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寄り目のテディベア
ホープ弁護士

作家 エド・マクベイン
出版日2000年04月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 ことは
(2024/02/18 16:03登録)
今回、ウォレン、トゥーツは別行動。87分署でつちかったモジュラー型のスタイル。
メインの事件は、導入はなかなか魅力的で、すこしずつ新たな情報が明かされ、飽きさせない。この辺の手管は、さすがマクベインだ。
しかし、最終的に明かされる真相は、途中である程度、予想がつき、インパクトはない。標準作というところ。
ホープに関しては、前作の怪我の状況にもいろいろ触れられ、シリーズをキャラで追っている人には楽しめる。
最後の1行は、気がきいていて、ニヤリとさせられた。

No.1 5点
(2019/08/19 00:59登録)
 銃撃による昏睡状態から抜け出した五ヵ月後、弁護士マシュー・ホープが復帰して最初の仕事に選んだのは、大手メーカー〈トイランド・トイランド〉を相手取ったテディベアの製造差し止め訴訟だった。玩具デザイナーの依頼人レイニー・コミンズは、トイランドの新製品『寄り目のくまグラディス』を、彼女がデザインした『寄り目のくまグラドリー』の模倣であると主張していた。元の勤務先の社長ブレット・トーランドが自分のアイデアを盗み、来たるクリスマス商戦の主力商品として販売しようとしているのだと。
 レイニー自身もグラドリー同様に斜視で、特殊な眼鏡でくまの目を正常に見せるアイデアは自らの体験に根差していると彼女は語る。だが事前審理での判事の反応は鈍く、被告席についているブレットとエッタのトーランド夫妻は静かに弁論を見守っていた。
 マシューは裁判の行方に自信をなくしたレイニーを勇気付けるが、翌水曜日の朝地元テレビ局の放送をつけた彼の眼と耳に飛びこんできたのは、ブレットが昨夜遅く彼のヨットで射殺され、レイニーが容疑者として拘留されたというニュースだった・・・
 1996年発表のホープ弁護士シリーズ第12作。前作で肩に一発、胸に一発の銃弾を撃ち込まれたホープはまだ完全には復調しておらず、恋人の州検事補パトリシアとの仲もしっくりいっていないようです。作中でも頻繁に不自由な身体に悪態をついています。とはいえ今回は彼が病躯を推す場面が多い。というのは専属の私立探偵チーム、ウォレン・チェインバーズとトゥーツ・カイリーのコンビが開店休業状態だからです。
 ホープの退院直後にトゥーツは旧知の悪徳警官と再会しコカインを吸引。再び悪癖がぶり返した彼女を、ウォレンは陸地から遠く離れたフロリダ洋上に監禁。強制的に禁断症状に落とし込み、中毒状態から解放しようと試みます。殺害現場もヨット上、二人のドラマもヨット上。これらを二重写しにして、交互にストーリーが展開します。
 それまでの行きがかりからレイニーの弁護を引き受けるホープ。ですが彼女の証言は二転三転し、彼にも全てを告げません。この辺りの微妙なアヤが見どころですかね。レイニーの所持品――金のヴィクトリア朝の指輪や、スカーフの行方が小道具に使われています。それが無くても、地の文からある程度の想像は付きますが。
 総合的には『小さな娘がいた』よりまたちょっと落ちた感じ。童話縛りがキツくなってたようで、第十作『メアリー、メアリー』あたりから枷を外すよう、エージェントを通して版元と交渉してたようですが、色々ゴタゴタしてくるとモチベーションを保ち続けるのが難しいのかもしれません。このシリーズもあと一作で終了なので、最後の踏ん張りに期待したい所です。

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