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ミステリの祭典

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たったひとつの 浦川氏の事件簿

作家 斎藤肇
出版日2001年09月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 メルカトル
(2023/06/02 22:43登録)
浦川氏のめぐる、極北でも究極でもない限界本格推理。
『BOOK』データベースより。

結論から言うと明らかな失敗作ですね。外堀から徐々に迫るじらしに、作者の読者を翻弄して陰で楽しんでいる姿が見え隠れして、一寸白けました。そもそも興味本位と、四作しか読んでいませんが、斎藤肇と云う人はまだ何かを隠しているのではないかみたいな、これまでの作品で発揮していない本領というものを、本作でもしかしたら見せているかも知れないという思いから読んでみたに過ぎません。だから、読後がっかりする気持ちとやっぱりなという諦めの境地が半々でしたね。
第一、フーでもなくハウでもなくホワイでもないものが本格ミステリと言えるのでしょうか。第一話『たったひとつの事件』は論理の飛躍があり過ぎて、もはやこじつけにしか思えませんし、第五話『どうでもいい事件』は本当にどうでもいいし。逆に既視感はあるものの人間の心理を鋭く抉った『壁の中の事件』やバトルロワイアル的趣向で意外性のある『閉ざされた夜の事件』は結構面白かったですが。

ラストに期待するも、当然の如く肩透かしを喰らいました。それまでの短編が有機的に結びつかず、結局こじつけじゃんとしか言い様がありません。作者のやりたかった事は分からないでもないですが、その目論見が成功したとはとても思えませんね。

No.1 5点 人並由真
(2019/07/22 20:59登録)
(ネタバレなし)
「ぼく」こと加波賢也は、小学校時代からの旧友・蓮井陽が人を殺したことを知っていた。そのことは誰も知らない筈だが、ある日、浦川という人物がぼくに声をかける。(「たったひとつの事件」)
 
 探偵・浦川氏の登場シーンが印象的な第一話「たったひとつの事件」から始まる、浦川氏が登場する全7本の連作短編集。

 かなりトリッキィな仕掛けがしてあるとwebの一部で評判なので読んでみたが……一読、ポカーン。しょうがないので、家族にも本を渡して読んで貰い、意見と感想を求めて、改めて考えを整理した。
 
 ……結局のところ、前述のwebなどでも賛否両論大きく評価が分かれているみたいで、褒める人はよくここまでひねくれた作品を、と支持しているみたい。
 ただ現在の個人的な思いとしてはむしろそうではなく
「(少しスレた)ミステリマニアなら誰でも思いつきながら、なかなか実現には至らないアイデアを力業で形に為した(その意味ではエラい)作品」
というべきではないか? という気がする。
 だから新本格という流派のひとつの核となる、遊び心は感じるんだよね。

 ただ、弱点としては、フツーに物語を読む限り、ほとんどの連作短編がひとつひとつのミステリとしてはあまり面白いと思えないことで。全体の仕掛けだけ最後にあっても、そこに行くまでがキツイなあ、という感慨。さらに第7話はメタ的な叙述が優先して、この文体には最後のサプライズ上での機能は特にないんだよね? あと、正直言いますけれど、第6話の内容がこういう話である意味がよく見えない。

 大枠としての作品の狙いは理解したつもりだけど、なにかまだ見落としているようなモヤモヤ気分も少なくない。本作が好きな人で、今も内容をよく覚えているミステリファンと面と向かってじっくり話がしたい、そんな思いがする一冊。 

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