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ミステリの祭典

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ヒト夜の永い夢

作家 柴田勝家
出版日2019年04月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 7点 メルカトル
(2019/09/30 22:48登録)
昭和2年。稀代の博物学者である南方熊楠のもとへ、超心理学者の福来友吉が訪れる。福来の誘いで学者たちの秘密団体「昭和考幽学会」へと加わった熊楠は、そこで新天皇即位の記念行事のため思考する自動人形を作ることに。粘菌コンピュータにより完成したその少女は天皇機関と名付けられるが―時代を築いた名士たちの知と因果が二・二六の帝都大混乱へと導かれていく、夢と現実の交わる日本を描いた一大昭和伝奇ロマン。
『BOOK』データベースより。

南方熊楠と愉快な仲間たちが天皇機関という、自らの意志を持ち人間すら超える脳髄を有する少女人形を陛下にお披露目すべく奮闘する物語。
シリアスな面とコミカルな面が絶妙にマッチした筆致は素晴らしく、一種酩酊するような夢の世界へと導いてくれます。個人的には第一部が最もワクワクしました。第三部では天皇機関対○○○という図式が完成しますが、あっさり片が付きすぎて拍子抜けでした。もう少し盛り上げても良かったのではないかと思いますが。で、結局オチはそれかいって感じですが、全般的に読み応えのある佳作ではないでしょうか。


【ネタバレ】


主な著名登場人物は熊楠始め、千里眼事件の福来友吉、宮沢賢治、平井太郎(江戸川乱歩)、佐藤春夫、西村真琴、岡崎邦輔、堀川辰吉郎、岩田準一、北一輝など。
特に宮沢賢治と南方熊楠の邂逅が印象に残ります。凄く素敵なエピソードだったと思いますね。勿論重要なシーンでもあります。

No.1 8点 虫暮部
(2019/07/09 10:49登録)
 『ドグラ・マグラ』を筆頭に先行する同系統(?)類似(?)作品は幾つも思い付くが、全然負けていない。内容が似ていると言う意味にあらず。博覧強記で広げる風呂敷は縦横無尽。さりとてきちんと着地を目指すでもなく、夢と現の間で右往左往するは奇天烈なエログロナンセンス。脱線した部分の方が楽しそうな筆致であることもこの手の奇書の共通点だ。

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