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ミステリの祭典

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闇夜の底で踊れ

作家 増島拓哉
出版日2019年02月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点
(2019/10/18 12:31登録)
第31回小説すばる新人賞受賞作。

ざまあみさらせ、あほんだら!
パチンコ好きでチンピラ風の伊達と、ヤクザの山本との掛け合いは、黒川博行氏の疫病神風で、テンポがよすぎて読みだしたら止まらない。ページが進みすぎてもったいないぐらいだ。
お笑いものかと勘違いしそうだが、じつは大阪ノワールと呼ばれているぐらいで、後半は凄みが出てくる。

ノワール物はあまり読まないので比較できる小説はないが、映画でたとえるなら、哀愁要素を含んだ香港ノワールといったところだろう。『インファナル・アフェア』みたいな感じかな、ちょっと褒めすぎかな。
本作はさらにお笑い要素が加味されている。
だからこそストーリーに変化があって楽しめたのだろう。
その変転のための仕掛けもあるが、これはまったく読めなかった。
ラストは物悲しいが、もっともっと切なくして、余韻にひたらせてほしいとも思った。

著者が19歳というのには驚いた。
伊達が36歳だから、19歳では描ききれないだろう。24,5歳ぐらいに見えてしまう。
でも、少し幼稚な性格に設定して誤魔化しているところは、テクニック抜群ということなのか。

No.1 7点 猫サーカス
(2019/06/03 19:40登録)
第31回小説すばる新人賞受賞作。「小説すばる」にしては珍しいノワールで、しかも作者はなんと19歳。パチンコ依存症の無職の男が、風俗嬢に入れ込んで借金を作り、暴力団の抗争に、巻き込まれていく物語。というと、通俗的なタイトルと合わさって既視感に満ちた物語と思うかもしれないが、そうではない。確かに前半は新鮮味に乏しいけれど、抗争の構図が露わになってから会話もキャラクターもはじけて、素晴らしい語りになる。読者を脅かす仕掛けもいくつかあり、それが次々と明らかになっていく終盤は緊迫感に包まれ、それでいて実に小気味よく、殺人が繰り返されるのに不思議と心地よい(殺人の動機だけはやや古臭いが)。それはひとえに作者がもつユーモア感覚のおかげでしょう。黒川博行氏に迫る笑いに満ちた会話、作者が多大な影響を受けたという大沢在昌氏の優れた語りと人物像の創出が、陰惨な暴力劇を調子のよいピカレスクに仕立て上げた。才能あふれる出色の新人デビュー作。

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