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ミステリの祭典

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五時から七時までの死

作家 アンドレ・ポール・デュシャトー
出版日1975年08月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 tider-tiger
(2023/08/31 22:23登録)
『子供がそのまま大人になったような。いってみれば、パイプをふかす、その合い間合い間にチューインガムも噛んでいたい。そんな人なのだ』本文より

~ヒルダは睡眠剤で自殺を図った。朦朧としているさなかに電話が鳴り、迷いながらもどうにか電話を取った。昨夜間違い電話をかけてきた男だった。睡眠薬を大量に飲んだことを男に伝えた。男の機転でヒルダは一命をとりとめる。それ以来、男はときおりヒルダに電話をかけてくるようになるのだが。

1973年ベルギー。フランスミステリ大賞受賞作。心理描写と技巧に力点を置いたいかにもフランスミステリ的な作品。コンパクトにまとまり、作者の狙いどおりに決めるところはきちんと決まっているのに、どこかインパクトに欠ける。

悪くはないのになぜか記憶に残らなかった作品。知る限りでは類似作が2作あるが、それらと比較すると面白い場面と魅力的なキャラに欠ける。ヒルダの叔母はなかなか味わいがあったものの、総じて登場人物全体が薄っぺらい。そのせいか機械的に物語が進行しているような印象を受けてしまう。心理ばかりを追っていて、なかなかキャラが立ち上がってこない。
読み返してみると伏線の張り方などなかなかいいし、ミステリとしてはそんなに悪くないのにもったいない。

No.1 5点 人並由真
(2019/03/14 02:49登録)
(ネタバレなし)
 保険会社「オムニ・リスク」の女性事務員で26歳のヒルダ・ポレは、深く愛していた母としばらく前に死別。同性の同僚ニコール・クラエッセンや伯母ジェルメーヌなどとの付き合いはあるが孤独を癒やすことはできず、母の死以来、生きる気力が著しく減退していた。ヒルダは自殺を図って致死量の睡眠薬を飲むが、その時かかってきた間違い電話に応じ、相手の男性に自分が死の域にあることを何となく伝えてしまう。生きるようにと強い気迫で励ます相手の男は強引にヒルダの名と住所を聞き出し、医者を急行させて自分もヒルダのもとに赴いた。成り行きから自分の命を救った男に心引かれていくヒルダ。だが男=ルイ・ドゥロモンはちょうど会社での自分の部下レイモン・ヴェルジェの妻ジャニーヌと不倫関係をこしらせている状況だった。錯綜する人間関係のなかで、ヒルダの迎える運命は。

 1973年のベルギー作品で、74年度のフランス推理小説大賞受賞作品。フランスミステリのシンパとして本書巻末の解説を担当した日影丈吉によると、同賞は74年内に刊行された自国の作品のみならず、同年にフランス語に翻訳された海外ミステリも受賞の対象になるらしい。日本でいえば日本推理作家協会賞の本賞を、話題の翻訳ミステリに与えるような感じか。
 主要登場人物も少ない、いわゆる名探偵も登場しない、紙幅も少ない、ある種の技巧を用いたサスペンス仕立て……と、コテコテのフランスミステリ(ベルギー産)だが、本作の場合は巻頭の献辞がかのベルギーミステリ作家の大先輩S・A・ステーマンに捧げられていて、それもあって、ちょっと興味を惹かれた(ついでにいえば作中でヒルダがニコラス・フリーリングの『アムステルダムの恋』を読んだりするのも楽しい~ちなみに本書内では「アムステルダムの愛」と書名を表記……。ハヤカワ、自分とこで出している本だろう、しっかりせい)。
 中盤で視点がヒルダから別のキャラに変わり、少しずつ人間関係が明らかになっていく内に作者の狙いはなんとなく見えてしまうが、それでも物語がどういう着地点を踏むのかという興味でそれなりに読ませる。ラストのツイストはキレイに決まった感じだが、まあ先読みしてしまう人はしてしまうだろう。実際、このまんまでないにしても、かなり近いオチはもっと古い作品で読んだような気もする。キライじゃないけれど、2~3時間くらいで一気に読んで、何かを感じればよい、そんな作品。 
 ところでこの作者、Amazonで名前からのリンクをたぐると他のミステリ小説の邦訳はないけれど、ルブランのルパンもののコミカライズシリーズ用の文芸を提供してるのね。コミック作画のために原作をアレンジしたシナリオ作成か。日本で言うと氷川瓏とか武田武彦とか、そういうポジションかね。

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