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ミステリの祭典

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小さな娘がいた
ホープ弁護士

作家 エド・マクベイン
出版日1998年05月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 ことは
(2024/02/18 16:01登録)
構成が凝っている。
事件の内容から、ホープが普通に調べていく展開だったら、それほど面白くなかっただろう。ホープが撃たれて、シリーズ・キャラが並行して調べていく構成だから面白くなったと思う。この辺の語り方(誰の視点で何を語るか)は、さすがマクベイン。熟練の技を感じる。
どちらが先に構想されたかはわからないで、この構成にしたことで、シリーズ・キャラの内面が語られることになり、その部分がとくによい。
まあ、いいところを先に書いたが、事件のほうは、人間関係が複雑で見通しが悪いし、偶然がおおいし、謎と解決という点では物足りない。

No.1 5点
(2019/08/04 22:59登録)
 「メアリー、メアリー」事件から約四カ月半後の三月二十五日、弁護士マシュー・ホープはカルーサの黒人地区ニュータウンのバーで、店から出た所を二二口径の銃弾で続けざまに撃たれ、危篤状態に陥った。左肩と胸。〈S&I〉サーカスの興行主ジョージ・ステッドマンの依頼を受け、イベント会場用地三十エーカーの買収交渉にあたっている矢先のことだった。
 先の事件の苦い教訓から刑事事件の依頼を極力避けていた筈のホープが、なぜ命を狙われたのか?
 意識が戻らず昏睡状態の続くホープ。友人であるカルーサ警察の刑事モリス・ブルームや、バックアップ役の私立探偵ウォレン・チェインバーズとトゥーツ・カイリーのコンビは、マシューの足取りを追ううち、彼が個人的に三年前〈S&I〉の巡業先で起きた自殺事件を調べていたことを知る。
 ステッドマン同様興行権の五十パーセントを持つ二十二歳の女性マリア・トーランスの母親で、当時サーカスの花形だった小人のウィラが、専用トレーラーの中で額を撃って死亡したのだ。ミズーリ州ラザフォードの検屍審問では自殺として処理されたのだが、事件直前にトレーラーの専用金庫が盗まれるなど、不審な点がいくつもあった。
 ブルームとウォレン、そしてマシューの恋人である州検事補パトリシア・デミングと共同経営者のフランク・サマーヴィルは、マシューの記録を追い、彼の知った真実を必死に突き止めようとするが・・・
 1994年発表のシリーズ第11作目。HPBカバー裏には「ミステリ史上初の“昏睡探偵”誕生」とありますが、そこまで画期的な構成ではありません。ウォレンチームやブルームの捜査の合間に、脳裏に機械的に瞬くホープの記憶の残滓が挟まりストーリーは進行します。
 〈百獣の王〉を名乗る猛獣使いに片腕を嚙み切られた元熊の調教師、今は元調教師と結婚しているウィラの夫の駆け落ち相手、借金のカタにイベント用地を押さえている、元サーカス団員で今は大金持ちの黒人の妻。サーカスらしく多彩な関係者たちに聞き込みを続けるうち、表題の意味もまた二転三転していきます。読む前にはてっきり、マシューの娘ジョアンナを指すものと思ってましたけど。
 タイトルはマザーグースの一節ですが、目次を見ればわかるとおり露骨に内容を示唆。とはいえマクベインですから単純になぞらず、捻った展開にしてあります。ただ、最後に唐突に大掛かりな事件になるのはどんなもんかなと。ちょっとこうなるまでの手掛かりが少ないですね。構図にもそれほど面白みはありません。最後のパトリシアの追い込みはなかなかスリリングですが。
 サーカス関連のリサーチが彩りを添えていますが、まだ「ジャックが建てた家」「三匹のねずみ」辺りの水準には戻っていません。その前の「ジャックと豆の木」よりも下。とはいえ復調してはいます。

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