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ミステリの祭典

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コンビニなしでは生きられない

作家 秋保水菓
出版日2018年04月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 メルカトル
(2020/04/06 22:56登録)
大学生活に馴染めず中退した19歳の白秋。彼にとって唯一の居場所はバイト先のコンビニだった。そこに研修でやってきた女子高校生の黒葉深咲。強盗、繰り返しレジに並ぶ客、売り場から消えた少女。店内でひとたび事件が起これば、深咲は目を輝かせて、どんどん首を突っ込んでいく。彼女の暴走に翻弄されながら、謎を解く教育係の白秋。二人の究明は店の誰もが口を閉ざす過去の盗難事件へ。元店員が残した一枚のプリントが導く衝撃の真実とは?第56回メフィスト賞受賞作。
『BOOK』データベースより。

おそらく多くの方がこのタイトルから、ラノベに近い軽めで恋愛要素の強い作品と言う印象を受けると思います。しかし私は断言します。これは日常の謎を扱った、本格パズラーであり、青春小説であり、恋愛小説であると。近年のメフィスト賞の中では、その出来栄えは抜きん出ていると思います。
コンビニならではの事件の数々が、やがて一点に収束していく様は、使い古されたパターンでありながら、思わず深く首肯せざるを得ない吸引力を秘めています。その中でもクルーたちの人間関係や恋愛模様をも描き切り、非常に充実したエンターテインメント小説に仕上がっています。

まああまり期待せずに読み始めました訳ですが、期待以上のものを私の心に残してくれました。世界の片隅でひっそり生きている青年と、新しく仲間として共にコンビニで働くことになった女子高生のコンビ、西尾維新ならこのネタで十作は書くでしょう。是非シリーズ化して欲しいものです。が、話の流れから鑑みると難しいでしょうかねえ。でもやって欲しい。

No.1 7点 HORNET
(2019/02/18 20:37登録)
 第56回メフィスト賞受賞作。
 大学を中退し、コンビニバイトで生活している白秋。大学での人間関係に馴染めずリタイアした白秋には、そんな自分に対する劣等感があった。そんなある日、コンビニに新人研修生として女子高校生の黒葉深咲がやってきた。教育係を指名され、とまどいながらも対応する白秋だったが、レジに出たばかりの黒葉がコンビニ強盗に遭う。その後も、繰り返しレジに並ぶ客、売り場から消えた少女など、コンビニで続く奇異な出来事の真相を解いていくという「日常の謎」スタイルの連作短編集―
 だったのだが、この一冊は単なる奇譚集には終わらない。中盤からは過去にあったコンビニ店員の自殺事件に焦点があたり、次第にその真相に迫っていく展開になる。白秋と黒葉のラブコメ要素が、甘っちょろいラブストーリーを鬱陶しがる人にはうるさいかもしれないが、それも単なる物語を彩る要素に終わらないところに新鮮さを感じた。
 タイトルや表紙の印象ではラノベテイストの最近よく見るタイプに感じるが、意外にそうではなかったところに面白さを感じた。

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