home

ミステリの祭典

login
虚構推理短編集 岩永琴子の出現
岩永琴子シリーズ

作家 城平京
出版日2018年12月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 人並由真
(2019/06/10 17:54登録)
(ネタバレなし)
 さすがに長編『鋼人七瀬』ほどの剛球感はないものの、全体的に一定以上の変格パズラーとしての魅力が味わえる連作ミステリ。
 どれも相応に面白かったが『ギロチン三四郎』はよくある大ネタ(スレッサーの某短編を思い出した~これだけ書く分には、そっちともども、双方の作品を読み終えるまでネタバレになる人はいないと思う)ながら、話の転がし方で一番の結晶感を認めた。
 なお最後の『幻の自販機』は、最終的に大事にならないだろうと予見されているものの、岩永さんの下したこの決着のつけ方じゃ、相応に人生を狂わされてしまう関係者も出てきそうだな。まあその種の小市民的な規範や倫理に捕われない辺りも、この作品&主人公たちっぽいとは言えるのか。
 ところでおひいさまって、ちゃんとコミック版(いわゆる原作版)『人造人間キカイダー』を読んでるんですな(笑)。なんか嬉しくなりました。

No.1 7点 メルカトル
(2019/01/27 21:48登録)
妖怪から相談を受ける『知恵の神』岩永琴子を呼び出したのは、何百年と生きた水神の大蛇。その悩みは、自身が棲まう沼に他殺死体を捨てた犯人の動機だった。―「ヌシの大蛇は聞いていた」山奥で化け狸が作るうどんを食したため、意図せずアリバイが成立してしまった殺人犯に、嘘の真実を創れ。―「幻の自販機」真実よりも美しい、虚ろな推理を弄ぶ、虚構の推理ここに帰還!
『BOOK』データベースより。

妖怪変化、幽霊などが棲む異世界と本格ミステリを絶妙に融合させた珠玉の連作短編5作。
何と言っても岩永琴子とその恋人、桜川九郎のキャラがとても好感がもてます。二人とも人間ならざる存在でありながら、いかにも人間臭いごく普通の感覚を持つため、異様さが逆に際立ちます。キャラとして個人的には『電撃のピノッキオ、あるいは星に願いを』の化け猫が可愛くて気に入っていますね。
短編それぞれが違ったタイプの作品なので、様々なストーリーやトリックが楽しめます。虚構推理と言ってもあくまで正統派のミステリであって、嘘や推測で固めた推理でありながらも、真実味は間違いなく存在します。いかにもな解決に、それ以外に真実はあるのだろうかという気にさせてくれるほど、琴子の推理には説得力があると思います。

いずれにせよ、流石城平京恐るべし、と感じました。漫画の原作もいいですが、もっと本格ミステリの新作を描いて欲しいですよね。

2レコード表示中です 書評