home

ミステリの祭典

login
ランドスケープと夏の定理

作家 高島雄哉
出版日2018年08月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 5点 虫暮部
(2019/11/01 11:50登録)
 ハードSFのアイデアと軽妙なキャラクター(青花が一番魅力的に見えた)、双方を過不足なく描き出す文章力、と言った構成要素を並べると好物の筈なんだけど、何故かいまひとつ乗り切れなかった。どこがどう悪いと言うことではなく私との微妙な相性の問題だろう。

No.1 8点 小原庄助
(2019/01/14 10:08登録)
ワクワクしたいし、難しい作品にも挑戦したい。そんな欲張りな本好きにおすすめな一冊。
第5回創元SF短編賞を受賞した表題作と、続編2作からなる短編集で、宇宙や時間を巡る難解な理論が随所で展開されるのに、すこぶる読みやすい。
小惑星から採取した謎の物体「ドメインボール」を研究していた天才物理学者テアは、その内部に、自分たちの宇宙とは物理法則を異にする別の「宇宙」が存在していることに気づく。
好奇心に駆られたテアは、10兆個もの自身の情報クローンを作った上で、それらをドメインボール内に転送し、「彼女たち」を通じて未知の「宇宙」の探査を始める。内向的な秀才である、弟ネルスも、姉に呼び出され手伝うことになる。
抜群の頭脳を持ち、気が強い姉に振り回されてばかりの弟だが、いざとなると知恵と勇気を振り絞って難局に立ち向かう。そんなライトノベルのようなドタバタ劇と、彼らが語り、解き明かそうとする、「あらゆる宇宙に共通する普遍的な知能」の存在という壮大なテーマとのギャップに驚かされ、また魅了される。
情報量が多いので、本来はじっくり取り組むべき内容なのだが、作中人物の行動や会話が面白いので、十分に理解しないうちに、読み進んでしまうかもしれない。
あとがきで著者は、収録された3作はそれぞれ「真・善・美」が通奏低音だったと記している。それは知性・信頼・希望と言い換えてもいいだろう。最終話「楽園の速度」を読み終えれば、宇宙の見え方がガラリと変わるはずだ。

2レコード表示中です 書評