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ミステリの祭典

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ねじの回転

作家 ヘンリー・ジェイムズ
出版日1962年01月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 8点 クリスティ再読
(2024/01/25 14:49登録)
先日やった創元「怪奇小説傑作集1」に、ジェイムズの「エドマンド・オーム卿」が収録されていたこともあって、本作やらなきゃねえ、と取り上げる。
大学の英語の授業でジェイムズの「荒廃のベンチ」がテキストになっていたんだ。いや、参ったね。「これが英語か!」というくらいに観たことのない単語が続き、文章もうねうねと....とトンデモない難解小説だったわけだ。
うん、以前新潮文庫で本作は読んだこともあるが「しんどい小説」なのは判ってる。今回の選択でも
・新しめの翻訳(古い訳は読者への配慮が薄い)
・単品収録(お腹いっぱいになる)
で図書館で探した。光文社古典新訳文庫がいいかとも思ったが、貸出中。審美社(1993 野中惠子訳)が良さそうなのでこれを借りる。大型本!でも評者最近老眼が絶賛進行中だから、字が大きい方が助かる。

田舎で暮らす幼い兄妹の世話をする家庭教師の求人に20代女性の「わたし」は応募し採用される。兄妹は雇用主の甥姪に当たるのだが、一切の面倒を自分にかけないでほしい...という奇妙な制約に「わたし」は不審の念を抱くが、そのまま兄妹が住む田舎の屋敷へ。そこで家政を切り盛りするグロウス夫人とともに「わたし」はマイルズとフローラの兄妹の面倒を見ていく。天使のように美しく無垢な、と見えるこの兄妹だが、前任者の家庭教師ジェスル先生と下男のクウィントの「不品行」の噂や、幼いマイルズがなぜか寄宿学校を放校になった経緯など、暗い予感が屋敷には立ち込める....果たして「わたし」は不審な人影を目撃し、言い知れぬ恐怖感を味わった!

こんな話。もうコテコテのゴシック小説だもん、本サイトで扱って何の文句もなく、後世のホラーへの影響も絶大なものだ。でも、この小説はなかなか一筋縄ではいかない。話の枠組みは明快なんだけど、完全に「わたし」の意識のフィルターがかかっていて、なおかつ決定的な描写を避けて「読者の想像で怖くなる」を狙っている個所が多いため、「何が起きたのか」の客観性が薄くていろいろな解釈ができてしまうんだ。明示的ではないが「信用できない語り手」とも読める。具体的な描写を避けて想像させるあたりは、マッケンやらラヴクラフトに継承されたわけだし、「わたし」の精神が侵食されるさまに重点を置くならば、シャーリー・ジャクソンだったりする。
だから、実は幽霊なんていなくて、「わたし」の妄想が昂じた話だったと解釈しても、不思議でもなんでもない。そういうあたりがさらに「恐ろしい」。幽霊として出現する前の家庭教師と「わたし」が同一人物だったとしてもオカシイわけでもない、それも「恐ろしい」。

考えれば考えるほど「こわい話」。ホラーというのが技巧的な小説の極めつけだ、というのが本書1898年の時点で証明されているわけである。
(おかげさまで、面白さを堪能できた。本作は訳書を選ぶのがまず第一)

No.1 6点 弾十六
(2018/12/25 01:19登録)
1898年発表の「ねじの回転」を中心にした短篇集。南條 編の創元文庫(2005)で読みました。
「ねじの回転」だけでも読了に数週間かかりましたが、雑誌初出が約三ヶ月にわたる続き物だと知ってペースは間違っていなかったのだ、と変に納得。うねうねした文章に感心したりウンザリしたりドキドキしたりの不思議な読書体験でした。しばらく他の作品を読む気にならないので書誌データだけ示して保留です。

⑴The Turn of the Screw (Collier's Weekly連載 1898-1-27〜4-16): 評価6点
不思議としか言いようのない話。ぼかした表現にイライラ。でも納得させられる力技の文章。理に落ちた解釈をせずぼんやり受け入れるのが一番のような気持ちになる作品です。
p89 フィールディングの「アミーリア」: Amelia, by Henry Fielding (published in December 1751)
(ここまで2018-12-25記載)

⑵The Romance of Certain Old Clothes (Atlantic Monthly 1868-2 as by anon.)

⑶The Ghostly Rental (Scribner’s Monthly 1876-9 as by Heny James Jr.)

⑷Owen Wingrave (Graphic 1892-11-28)

⑸The Real Right Thing (Black and White 1892-4-16)※FictionMags Indexにより創元文庫の初出データを修正。

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