(2018/12/19 22:21登録)
(ネタバレなしです) 1949年発表のネロ・ウルフシリーズ第11作でアーノルド・ゼック三部作の第1作でもある本格派推理小説で、国内では雑誌「EQ」の125号から129号(1998年9月号から1999年2月号)の5回に渡って連載されました。ゼックはシャーロック・ホームズに対するモリアーティー教授のごとく暗黒街の黒幕という役柄のようですが本書では出番が遅く、しかも声のみの出演で存在感はそれほどでもありません。人気ラジオ番組の放送中にスポンサー提供のドリンクを飲んだゲスト出演者が毒殺される事件が扱われてます。名探偵が事件関係者を一堂に集めるといよいよ解決かと読者の期待が高まりますが、本書ではそれが実に3回もあります。新事実が明らかになって捜査は確かに進展しているのですがそれでも解決がなかなか見えてこない難事件です。ウルフの説明は「(証拠はないが)この仮説ですべて説明がつき、矛盾点もない」というもので、謎解き伏線を回収しての論理的推理を期待する読者には物足りなく感じられるかもしれませんが、プロットは充実していてそれなりに楽しめる作品です。余談になりますが日本語タイトルは(ゼックの頭文字をとって)「Zと呼ばれる男」の方がよかったように思います(英語原題は「And Be a Villain」です)。
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