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ミステリの祭典

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時が見下ろす町

作家 長岡弘樹
出版日2016年12月
平均点4.50点
書評数2人

No.2 5点 E-BANKER
(2025/11/03 11:18登録)
「小説NON」誌に断続的に発表された作品をまとめた連作短編集。
「短編集」といえば作者、くらい現代短編集界隈では第一人者(?)のように思える
単行本は2016年の発表。

①「白い修道士」=“モンクス・フード”(=白い修道士)は日本風にいえば「トリカブト」。ということで、まあ「毒殺」である。プロットの中心は祖母と孫娘の会話なのだが、どうも分かりにくい。
②「暗い融合」=本当に暗い話だ。でも、わざわざそのために、そんなことまでするかな?という疑問は当然起こる。
③「歪んだ走姿」=これもそう。ここまで偶然が続くとご都合主義がすぎるし、ここまでやるかなあー?という感は拭えない。ここまで読むと、ああ①から③まで緩~くつながってるんだなということが分かる。
④「苦い確率」=ギャンブルに勝つ方法。確かに、それはまあそうだろう。でも、それをこんな形で実践しなくても・・・という奴が登場。それに巻き込まれた三人の男はたまらない。
⑤「撫子の予言」=いるんだろうね。実際。こういう「並び数字のマニア」って。マニアの心は常人には分らんけど、それを分かって罠をはる女性が妻なんて・・・ある意味コワッ!
⑥「翳った指先」=いい人に見えたんだけどなあーあの人物。それがまさか〇〇とは・・・。今どき、紙幣をカラーコピーしたら犯罪ということを知らないなんて、中学生とはいえ現実感が薄い。
⑦「刃の行方」=最初よく分からなかった。連作中の立ち位置も不明な第七編。
⑧「交点の香り」=空き巣に入られた女性が部屋でバッタリと遭遇。この女性は全盲で犯人の姿は見えないはず・・・だった。実は全盲は女性の嘘。で、どうなる? ただ、障害年金の申請には診断書が必要だから、医者もグルじゃないと虚偽申請できないと思うんだけど・・・

以上8編。
①から⑧まで、どこかの主人公がどこかに端役で登場するなど、緩く世界観を共有する連作集。
こういうプロットはたまにあるけど、本作はそこになにか仕掛けがしてあるというわけではない。(そこに期待してしまった)
他の方も書かれてますが、「そんなことでそこまでするかな?」といった、ちょっと腑に落ちない感覚は確かに分かる。

短編の場合、どうしても登場人物が限られるので、その少ない人物に役目を割り振らざるを得なくなる。そこに「仕掛け」「トリック」を咬ませると、どうしても無理が生じてしまう場合がある。きっとそういうことなんだろうと思う。
やっぱり短編は「切れ味」が一番大事。最後に「オッ!」や「エッ!」と思わせることができれば概ね成功なんだろう。
本作は・・・そこまでではないな。

No.1 4点 まさむね
(2018/11/29 19:47登録)
 そもそもミステリーの大概は「作り物」なのでしょうが、それにしても、この連作短編の「作り物感」は強すぎます。反転を経て人間の心情を描こうという意図は分らないでもないものの、どの短編でも「いやいや、そんなことはやらないでしょ、普通は」といった面が否定できません。さすがに狙い過ぎでしょう。それに、連作短編の形態を採った意義も感じられません。読みやすいことは評価するのですが…。

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