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ミステリの祭典

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文字渦

作家 円城塔
出版日2018年07月
平均点7.50点
書評数2人

No.2 7点 虫暮部
(2019/01/16 10:31登録)
 鏡花水月 言語道断 驚天動地 仰天放置 
 品磊蟲聶 焱垚鑫淼 禍媧堝騧 呵呵大笑
 融通無碍 字由字在 気字壮大 字宙遊泳
 倚馬七紙 五里霧中 舌先三寸 炎上々等

No.1 8点 小原庄助
(2018/11/22 09:48登録)
文字には呪術的な力がある。ただの線と点の組み合わせが特定の意味を持つこと自体が神秘だ。
この作品は文字にまつわる12編の短編からなるが、圧倒的なイメージの広がりと論理の展開が心地よい一方で、読み進めるうちに思考の迷宮に迷込んでいくような困惑を覚える。
川端康成文学賞を受賞した表題作は、漢字が生まれた古代中国が舞台。自身の統治が死後も永遠に続くことを望んだ始皇帝は、壮大な陵墓の副葬品として「兵馬俑」など秦の人々や動物を写した像を作らせたが、そこには、未知の漢字を含む3万もの文字を記した竹簡も埋められていた。主人公である俑を作る職人は、始皇帝が定めたシンプルな字体に違和感を抱きつつ、神秘性をも感じ取る。俑と文字がそれぞれに映し出す姿とは何か・・・。
というと、いかにも伝統的な文字の枠に収まりそうだが、そう単純に象徴性や寓意に還元されない。捉えどころのない虚無が、この作品にはある。空虚なのではなく、意味ならぬ「虚味」をはらんだ作品というべきか。
それは、印刷された文字が星のように宇宙に浮かび、文字が島となって浮かぶ「緑字」や、本文に付されたルビが自立して語りだす「誤字」などで、いっそう顕著だ。円城作品には、読者を安易に「分かった」気にさせず、考え続けることの快楽を体感させる「虚無」がある。

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