ただ、それだけでよかったんです |
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作家 | 松村涼哉 |
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出版日 | 2016年03月 |
平均点 | 4.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 4点 | メルカトル | |
(2020/11/21 22:32登録) ある中学校で一人の男子生徒Kが自殺した。『菅原拓は悪魔です』という遺書を残して―。自殺の背景には、菅原拓によるKたち四人への壮絶なイジメがあったという。だが、菅原拓はスクールカースト最下位の地味な生徒で、Kは人気者の天才少年。また、イジメの目撃者が誰一人いないことなど、多くの謎が残された。なぜ、Kは自殺しなければならなかったのか。「革命は進む。どうか嘲笑して見てほしい。情けなくてちっぽけな僕の革命の物語を―」悪魔と呼ばれた少年・菅原拓が語り始めるとき、誰も予想できなかった、驚愕の真実が浮かび上がる。第22回電撃小説大賞受賞 『BOOK』データベースより。 そもそも物語の根底にある人間力テストが理解できません。そんな物が現代日本に実際に存在したとしたら、即人権問題に繋がりますよね。父兄がまず大騒ぎ、ネット、マスコミで叩かれて直ぐに取りやめになるでしょう。中学校の生徒をランク付けするなど噴飯ものですね。そんな設定に眉を顰めざるを得ません。それを除けば、もうこういった類の話には食傷気味でして、あまりに定型的過ぎてどうにも感心出来ません。 それと安直に「革命」の言葉を使っていますが、それだけの事で果たして革命になり得るのかなと思いますよ。電撃小説大賞受賞作だから、ラノベなのでしょうが、その割には出来損ないのミステリもどきみたいな印象を受けますが。内容は重めで暗く陰湿で青春らしさの欠片もありません。 これを評して驚愕の事実とかどんでん返しとか言うのは、大きな間違いです。完全に予定調和の世界でしょう。もうそろそろいじめ問題を軽く取り扱うのは止めにしませんか。必然性があれば別ですが、不用意に触れると怪我をしますし、あまりにありふれ過ぎていてうんざりです。 ただ一つ、誰がどんな役目を果たしているのか、には注目すべきものがあると思いました。 |
No.1 | 4点 | 人並由真 | |
(2020/05/19 14:55登録) (ネタバレなし) 久世川第二中学で、成績優秀でスポーツ万能、男女からも人気があった優等生・岸谷昌也が縊死自殺する。昌也は級友・菅原拓が悪魔で、自分を含む四人の生徒を支配していじめていたという主旨の遺書を遺していた。「わたし」こと大学三年生の姉・香苗は、弟の死に至る事情とくだんの菅原拓のことを探ろうと行動を開始。幼馴染みにして「秘密兵器」である「さよぽん」こと紗世に協力を願う。一方で「ぼく」こと菅原拓もまた、過酷な現実に向かい合っていた。 早朝4時。本当ならいい加減寝た方がいいが、大雨の中を愛猫が外に散歩に出たので帰ってきたら体を拭いてやるためもうしばらく起きていようと思い、これを読み出す。(3分の2くらいまで進んだところで無事に帰ってきて、読むのは一時中断。そのまま最後まで読了した。) うんまあ、荒削りなところはあるし、お話をよくも悪くもドラマの枠内でまとめてしまったうそ臭さはありますが、その辺はさすがに作者も十分にわかっていたところであろう。 主人公・拓の採った行動は、切実でたしかにある種のリアルさを感じさせながら、一方でかなりめんどくさい。しかしその面倒な迂路を語るためのストーリーという狙いはよく心に響いてきます。 ただ事態の構成に関与した準・主要キャラ的な連中のキャラクターがほとんど見えてこないし、語られてもいないので(該当者のうちの一人だけSNSで表に出てくるが)、本当にそういうことになるしかなかったの? という印象もある。とはいえこういう作品の場合、外野の読者が聞いた風なことを口にすることはそれだけで作者の思うつぼ、というような怖さもありますが(笑)。 終盤で表層に浮かんでくる意外なキーパーソンの正体は、つい先般、評者がかなり感銘した別作品のものと酷似しており、いささか慌てた。こっちの方がずっと先だったんだね。まあ、後の方がたまたま同じ着地点を踏んでしまったのか、それともこちらの本家取りをあえてしようとしたのか、そこまでは分からないが。こういうことがあるから、やはりミステリって多読が必須なんだよな。いや行き着く先は迷宮だけれど。 ちなみに評点が低めなのは、作中である登場人物が轢死された猫の死体を嫌がらせに使うという不愉快な描写があるからです。そういう演出をした作者の狙いはわからないでもないが、いろんな意味でやめてくれ。 |