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ミステリの祭典

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地獄島の要塞

作家 ジャック・ヒギンズ
出版日1974年08月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 tider-tiger
(2023/02/19 01:28登録)
~ジャック・サヴェージはエジプトでサルベージの仕事を請け負い、かなりの成功を収めていたが、部下の一人がイスラエルのスパイであることが発覚、着のみ着のままエジプトからエーゲ海へと逃げ出す事態に陥った。そんな彼にギリシアの反体制派勢力からちょっぴり危険なオファーが舞い込んだ。連中はサヴェージの軍歴に目をつけたのであった。

1970年イギリス。ヒギンズの本邦初登場の作品。1967~1968年頃、第三次中東戦争のすぐ後という時代設定の元で潜水夫が活躍する話。本作あたりからヒギンズは頭角を表しはじめたとされているらしい。確かに60年代の諸作よりもレベルアップした感があって充分に面白いのだが、秀作というにはもう一歩というところ。

裏表紙のあらすじでは鉄壁強固な要塞への潜入がストーリーの主軸であるかのように書かれているが、ぜんぜんそんなことはなくて、むしろ要塞潜入はそれほど印象的なパートではなかった。良いところは他にある。
前半は面白く読めるが一貫性に欠けるきらいがあって、物語の波に滑らかに乗ることができない。コース料理ではなくて、あちこちつまむバイキング形式な作品。もちろんバイキングにはバイキングの良さがある。
キャラについては人物像はまあまあ描けてはいても、彼らを使い切れていない。
また、ヒロインが19歳というのはちょっと無理があるように感じた。アイルランド人がからむとヒギンズの筆は過剰に走りがちだが、本作では主人公のアイルランド人属性が物語にほどよく溶け込んでいた。

「地獄島は味覚糖よりも甘い」は言い過ぎにしても、どうにも『地獄島の要塞』なるタイトルには違和感ありありである。
原題は『Night Judgement at Sinos』このくらいがちょうど良い。
以下の言葉がタイトルに使われている―特に翻訳もの―場合は注意が必要だと思っている。原題を必ず確認する習慣をつけたい。
『悪夢』『恐怖』『悪魔』『地獄』他、まだまだあるぞ。

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