(2018/08/17 08:54登録)
(ネタバレなしです) わずか2作のミステリー作品しか書かず心理学者としての道を歩むことになる(そしてその方面で立派な業績を残したらしい)イザベル・B・マイヤーズ(1897-1980)の最終作が1934年発表の本書で、前作同様ジャーニンガムを探偵役にした本格派推理小説です。古風でスリラー色の濃かった前作と比べるとかなり洗練された雰囲気になっています。ただ読みやすいのかと言うとそれは別問題で、自殺か他殺かはっきりしない、自殺にしろ他殺にしろ動機もはっきりしないという展開で長く引っ張るのでもやもや感は相当なものです。18章の最後に示される動機(の可能性)は現代作品では出版許可が出ないでしょうね(コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズ作品やエラリー・クイーン作品にもありましたけど)。最終章の手掛かりのどんでん返しはなかなかの工夫ですが、説明が妙にぼかし気味になっていて犯人をはっきり名指ししないのは評価が分かれそうですね。「嘘のはずがない。さりとて、真実のはずもない」というジャーニンガムの説明をちゃんと理解できれば犯人もわかるようにはなっていますが。
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