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ミステリの祭典

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空白の時
87分署

作家 エド・マクベイン
出版日1962年01月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点
(2020/07/06 10:19登録)
87分署シリーズ、中編3編物。
黒澤の『天国と地獄』のアイデアが、本シリーズの『キングの身代金』にあることぐらいは知っていたが、本シリーズも本著者も読むのは初めてです。
手始めにまずは中短編から。

それぞれの作品にはスティーブ・キャレラ、マイヤー・マイヤー、コットン・ホース・・・などの刑事たちが登場します。
ただ、87分署の刑事たちがひっきりなしに登場し、刑事ごとに場面が変わり捜査をする、といったキャラの目立たない警察組織物の代表格なのかと想像していましたが、予想に反し、中編集ということもあって、それほど警察臭は感じませんでした。

特に3作目の『雪山の殺人』は、ただ一人の87分署の刑事・ホースが休暇中、スキー場で巻き込まれ探偵のように活躍するというスタイルなので、これはまったくの想定外でした。もしかして本作は番外編的な位置づけなのでしょうか?
この作品でホースがまさに事件に遭遇する場面はサスペンスがたっぷりです。この冒頭部分には魅かれました。

<他2作品>
『空白の時』 アパートでの若い女性の謎の死。これに最後まで引っ張られる。全体の構図、構成は悪くない。
『J』 ダイイングメッセージ物。超本格、ということは絶対にない。まずまずか、いやイマイチかな。

No.1 6点
(2018/11/29 19:17登録)
 熱気のこもる八月の夜、南十一番街の家具つきアパートで女が扼殺された。腐敗が進み、黒人と見紛うばかりの姿で。だが、その女クローディア・デイヴィスは二つの銀行に六万ドル以上もの預金を持っていた。安アパートに住みながら、高額の預金を抱え込む女――この被害者の正体は?
 スティーヴ・キャレラは事件の手掛かりを求め、二ヶ月前にトライアングル湖で起こった彼女のいとこ、ジョシー・トンプソン溺死事件の再調査にあたる――「空白の時」。
 四月一日、エイプリル・フール。教会の裏手でユダヤ教の牧師〈ラビ〉が、イスラエルの色である白と青のペンキに塗れ、めった刺しにされて殺害された。そして教会側の壁には白く「J」の文字が。マイヤー・マイヤーは近隣に住む反ユダヤ運動家を殺人犯と睨むが――「"J"」。
 吹雪に降り込められたロースン山で起きた殺人事件。被害者の女性はリフトに乗った状態のまま、スキーのストックで心臓を突き刺されていた。アイソラを離れ、恋人とスキーを楽しんでいたコットン・ホースは義憤に駆られるが、彼を尻目にまたしても殺人が――「雪山の殺人」。
 87分署シリーズ第16作。といってもホース孤軍奮闘の「雪山の殺人」以外は、驚くほどいつもの長編と変わりません。オチがきちんと付いてるんで、むしろ面白いくらい。
 出来映えはまあ掲載順。「"J"」はダイイング・メッセージよりも、ユダヤ教関連の風俗描写が良い感じです。トリックは表題作に一歩譲りますが、味わいはこれが一番じゃないですかね。ただケメルマンのラビ・シリーズは全然手を付けてないんで、この分野にはあまり詳しくないですが。
 吹雪の山荘ものの「雪山の殺人」は期待したほどでは無かったです。アイソラが舞台としてしっかり構築されてる分、やはり離れると魅力が半減しますね。作品自体が短ければなおさら。
 以上三中編収録。気分転換で短編集やってみたけど、ネタ消費が割に合わなくて一回こっきりで止めたんじゃないかな。どうもそんな気がします。逆に言えば一粒で二度三度美味しい、読者にはお得な一冊です。

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