嵐が丘 |
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作家 | エミリー・ブロンテ |
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出版日 | 1950年01月 |
平均点 | 8.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 8点 | クリスティ再読 | |
(2022/01/03 13:55登録) 大昔読んだきりだけど、改めて読んでノンストップで面白い小説。凄いな。 ゴシック・ロマンスの大古典だから、本サイトでもアリな作品なのは間違いなし。本当に読んでいて、ポオとの血縁を強く感じる。一応ビザールな墓暴きとかある(描写は節度あり)し、ラストは幽霊。「世界十大小説」とかビビる必要のないエンタメだよ(いやネタ元のモームも純文かというと怪しいし)。 貰われっ子なヒースクリフが虐待を受けてヒネて、合法的な復讐計画を練って着実に実行し、それを果たすんだけども、とある事実に復讐され返す話、といえばそう。そういう話の綾と登場するキャラの濃い面々(エドガーみたいにキャラが薄いのも逆な「濃さ」)の卍巴だけでもずいぶんのお愉しみ。で巧妙な叙述の仕掛けもあって、こりゃ、読んでて止まらん。 個人的には、もやしっ子リントンのヒネクレ具合に、よーこんなキャラ作るな、という面白味を感じる。キャサリン母娘の女王様気質、策士な語り手ネリー、お宗旨狂いの変人ジョウゼフやらやら、荒々しい風土にはこんな荒々しいキャラが似合う、とばかりに暴れまくり、でも最後には何となくハッピーエンドになる(苦笑)。 昔の映画は美男のローレンス・オリヴィエだったけど、どっちかいえばゴッホの自画像みたいな顔をヒースクリフを評者は想像しちゃう。 正月みたいな機会に読むには最適な本じゃないかしら。それこそ暖炉に足を向けながら(暖炉なんぞないが、苦笑) |
No.1 | 9点 | 斎藤警部 | |
(2018/07/06 12:40登録) 探偵小説黎明の時代に早くも生まれた魁偉なる大イヤミス。構成の妙、大いに有り(当時は物議を醸したとか)。 旅人ロックウッドが訪れた田舎(イングランド北部ヨークシャー)の館に棲むは厭世の紳士ヒースクリフ、若い男女キャサリンとヘアトン(及び老僕)。 見たところ険悪な仲の三人にはどの組み合わせの親子関係も婚姻関係も無いと言う。 では何故そんな三人が一緒に? 不意に遭遇した深く暗い謎を説き明かすべく過去の一切を旅人相手に語り尽す(?)のは”近隣にあるもう一つの館”の家政婦。。。。 恋愛小説の逸品と伝えられる本作ですが、登場人物表と曰くありげな「妙な家系図」を見ればたちまち鋭いミステリ興味が噴出し、少し読み進めば忽ち、変則ハウダニットの好奇心に王道ホワットダニットの竜巻が覆いかぶさりに掛かります。 ごく狭いコミュニティに展開する尋常ならざる嫌悪と復讐のエナジーは早過ぎた核爆発のメタファーかも知れません。 あまりに突出した癒やしの、美しい臨終シーンも忘れられない。 本作が後世のインスピレーションを誑かした『かも知れない』ミステリ要素は。。 (現代感覚の)本格流儀に絞っても、或る種の●●に依る●●トリック、信頼出来ない語り手、小説構造によるミスリード乃至●●トリック、現在の異状から過去の犯罪を暴き出す趣向、「私」というワトソン役の存在(?)、細かい所では(ちょっと某館モノ著名作を思わせる)遺産相続に絡むナニも。。。 それらに加えてあまりに深く痛くイヤミスィーな、度を超した復讐と”心の犯罪”の底が見えない地獄模様の無間陳述。。のようでいて第一の(?)語り手、旅人ロックウッドが絶妙なコミック・リリーフとして機能してくれる作者のやさしさも見逃せない。 行方不明時代のヒースクリフがどこで●●●●●●来たのか全く言及どころか暗示もされないのだが(実はほんの微かに仄めかしてはいる、と思うが)、、そこんとこを全ての道徳的悪事の「動機」と並んで最後に二大真打謎解きの披歴という構成にしていれば、こりゃ紛れもないミステリではないか、但し現代の眼から見て。同時代的にはそれでもいっぷう変わった一般小説ってとこか。(当時は「モルグ街」のころ) ううむ、ひょっとして名作「●●の●の●」の、映像化が不可能とされる或る重大要素は、本作にインスパイアされていたりして。 本作(のTVドラマ)に触発されたというケイト・ブッシュの同名曲’Wuthering Heights(嵐が丘)’、ミステリ神経敏感な方にとっては歌詞が何気に本作の核心ネタバレを掠る感じになっておりますので、、と言ってもタツローの「夏への扉」に較べたら全然安全ですが、、いちおうご注意を。 逆に言うと、本作を読んだ後にこの曲を聴けばより味わい深く、怖い、に違い無い。 蹴球W杯イングランドが勝ち残っている間にお読みになればより一層、胸が締め付けられる、かも。 一度でいいから見てみたかった 女房がHeathcliff隠すとこ 歌丸です(安らかに) |