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ミステリの祭典

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花髑髏
由利・三津木シリーズ

作家 横溝正史
出版日1976年04月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 5点 ボナンザ
(2021/10/17 19:25登録)
ノリで最後まで突っ走った白蝋変化は中々のもの。後から読み返すとむち打ちのシーンとか、えっじゃあ・・・となるものの、細かいことは気にしてはいけない。地の文の煽りが時代を感じさせるぜ。

No.1 8点
(2018/06/18 18:31登録)
 日本橋の大老舗「べに屋」一族の掟によって引き裂かれた諸井慎介と六条月代。慎介は本家の婿養子となるも、妻殺しの嫌疑を掛けられ死刑囚となってしまう。月代は五万円の報酬で地下道を掘らせ嵐の夜に脱獄を決行させるが、直前の監房入れ替えにより救い出したのは慎介ではなく、希代の大悪人「白蠟三郎」だった!

 表題作他一編はフツーの通俗物ですが、中編「白蠟変化」が物凄い。常識を張り倒すようなとんでもない発端だけでも買えますが、トチ狂った冒頭部から一向にテンションが落ちないまま最後まで突っ走ります。
 三郎の脱獄を知って恐怖したのは、彼を密告して逮捕させた踊り子花園千夜子。劇場のライトで大写しにされた三郎の四本指に脅えたり(以前に指を女に噛み千切られています)、自宅の三面鏡に四本指の跡がベットリと押されていたり。
神経をやられた千夜子は酒を呷って恐怖を忘れ、自宅地下の檻に監禁してある美少年を鞭で嬲って憂さを晴らします(このへんも狂ってます)。
彼女を尾行した三郎は美少年を解放しますが、彼は逆に三郎を襲って檻に閉じ込めた後、千夜子を刺し殺して逃走してしまいます。
 その後は蟇のような男「寅蔵」を従え、六条月代を付け狙うこの殺人美少年「鮫島鱗三」と白蠟三郎の対決に、月代に横恋慕する病院長「鴨打博士」が絡む展開。
三津木俊助はちょっかいを出すも死人を増やすだけ、由利先生はメインの謎は解くも怪人たちの闘争劇には全く干渉出来ません。あんま登場した意味がないです。
 謎が解けて怪人たちの争いも決着し、これで大団円かと思いきやさらに殴られ、最後は人間味があるんだかないんだか分からない獄中からの三郎の手紙で幕を閉じます。

 乱歩やルパンをより過激にして煮凝りにしたようなこの作品。とにかく醒めるヒマが一切無いので、何も考えずに読めばこれほど面白い小説もありません。ツッコミ処は山の様にありますが。
 人格疑われそうですけど8点付けときます。大衆小説のある種頂点を極めてます。大横溝やべえ。

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