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ミステリの祭典

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メグレと奇妙な女中の謎
メグレ警視 雑誌「EQ」 1986/05 NO.51掲載

作家 ジョルジュ・シムノン
出版日不明
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 クリスティ再読
(2020/01/04 17:53登録)
「謎のピクピュス」同様「EQ」に掲載されたまま未刊行の第二期の長編である。いやこれ、別に名作でも何でもないが、実に小洒落た話。大好き! メグレの父性っぽい魅力がキラキラする作品である。
事件はパリ郊外の新興住宅地で起きた引退した勤め人「義足のラピィー」老人殺しを巡る話なんだが、実質この老人の女中のフェリシイとメグレとの奇妙な関係がすべて。フェリシイはちょいと天然さんの「夢見る乙女」。ファッションもヘンにズレているし、行動も思い込みが強くて頓狂。老人の生活について一番よく知る女なのだが、メグレに妙な敵意を抱いちゃったから、話がコジれるばかり。メグレはフェリシイが事件に何も関わってないことは最初からお見通しなのだが、フェリシイは気が付かないうちに事件の大きなカギを握っていたのだ...

伊勢えびを背中に隠しながら、
「ねえフェリシイ....重要な問題がある....」
彼女はすでに警戒しはじめている。
「マヨネーズ・ソースを作れるかね?」
傲慢な笑み。
「それじゃ、すぐに作って、このムッシュウをゆでてほしい」

とメグレも反抗期の娘に対する父親みたいに、フェリシイに伊勢エビを御馳走するのだ。御馳走を食べて、フェリシイが目覚めたとき、事件はすべて解決し、メグレはフェリシイにカフェ・オ・レを作って持って行って、そして去っていく。
何という洒落た話だろう!こんなのも書けるシムノン素敵。今一つ目立たない第二期メグレもなかなか隅におけない。

No.1 7点
(2018/06/17 13:35登録)
 未単行本化メグレシリーズ第2弾。日本では「ピクピュス」の次に翻訳掲載されました。本国では「メグレと謎のピクピュス」「メグレと死体刑事」と、3長編一冊合本で1944年に出版されています。中編「ホテル"北極星"」同様キャラ萌え作品ですね。夢見がちな女中に振り回されながら彼女を殺人犯から守ろうとするメグレを描いたチャーミングな長編。「ピクピュス」には及ばないものの良い感じです。
 折からの別荘ブームに乗って土地成金となった元船員の因業爺"義足のラピィー"。
自宅で押し込み強盗に殺害された彼が全財産を残した相手は弟でも甥っ子でもなく、奇妙な帽子を被った住み込み女中だった。しかし彼は年金以外の現金を殆ど自宅に置いていない。果たして強盗の目的は何なのか?
 メグレは非協力的な女中フェリシイと事あるごとに衝突しながら事件の謎に迫ろうとするが......。

 フェリシイ「やっぱりあんたなんか嫌いだわ!」
 メグレ「私は、フェリシイ、あんたが大好きだよ!」

シムノン最盛期だけに文章もなかなかのもの。メグレのベスト10とかそんなのではないですが、愛着の持てる一品です。

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