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ミステリの祭典

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メグレと謎のピクピュス
メグレ警視 雑誌「EQ」 1983/07 NO.34掲載

作家 ジョルジュ・シムノン
出版日不明
平均点7.50点
書評数2人

No.2 7点 クリスティ再読
(2020/01/03 11:55登録)
年末年始で帰省して大掃除とかしてたら、大昔の「EQ」が出てきたよ。で見たらねえ、おいしい作品が実に山盛りになっていた。シムノンでも本作、「奇妙な女中の謎」、クリスティの戯曲「殺人をもう一度」、スタウトでも「ネロ・ウルフ対FBI」「シーザーの埋葬」など、ちょっとここらで寄り道したくなる作品多数発掘。「メグレ激怒する」の文庫も買うことなかったな...で一番手は本作。メグレ第二期の長編で、単行本としては未刊行。
殺人予告を見つけて通報した男は自殺を図る、その殺人予告通りに女占い師が殺される。その現場には耄碌した老人が閉じ込められていた...この老人は資産家の妻と娘に虐待されているようだった。事件を見つけたのは「三文酒場」みたいなパリ郊外の船宿のおかみ。その船宿にメグレは赴くが、そこで何かが?
と、話が実に多岐に広がっていって、「話、畳めるの?」と読んでて不安になるくらい。
けど、シムノン、これをちゃんと畳んでみせる。犯行予告も老人の謎も船宿の役割もちゃんとつながっていて、メグレはとりとめのない出来ごとの裏にある犯罪組織とけち臭い詐欺行為を暴き出す。お手際お見事の秀作。大名作とまでは思わないが、単行本にしないのは損失の部類。

No.1 8点
(2018/05/15 01:25登録)
 ちょこちょこメグレ物を集めて80編程読んでいるのですが、これは当たり。雑誌「EQ」に載ったまま単行本化されていない6つの作品の一つです。そのうち長編の数は5本、その中で最初に掲載されたもの。
 冒頭から謎の署名と殺人予告、女占い師の死、殺害現場に閉じ込められた老人と、後期メグレを読みつけていると大丈夫かいなという気にさせられますが、このへんのメグレ物はマンネリ打破で意欲的に新機軸を試みていた時期なので問題ありません。
この作品のネタを転用すると、マジに枯れた年代のヤツが三本くらい書けます。
 といっても一部は過去の短編の転用なのですが、それを単なる焼き直しに終わらせず脇筋にして本筋と交差させて膨らませているのは流石です。
 犯人の遣り口にメグレは結構憤激するのですが、そこには皮肉な結末が待っていて、
最後にはもうどうでもええわとばかりに奥さんの元に帰ってゆくのでした。
 いやあ、いいなあ。
 個人的にメグレ物のベスト10には入ると思います。
と言っても「シムノンを読む(瀬名秀明さんのやつ)」お勧めの「オランダの犯罪」は読んでないですけどね。
 もっと面白い未読のメグレがあるといいなあ。楽しみ楽しみ。

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