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ミステリの祭典

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絶望の歌を唄え

作家 堂場瞬一
出版日2017年12月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 虫暮部
(2025/03/12 13:21登録)
 語り手のキャラクターがイマイチなんだけど、その周囲の脇役達は色々な方向性の人がいて、惹き付けられる “場” になっている。或る種の諸行無常感を孕みつつもテンポは良く、熟練のカジュアルなハード・ボイルド(悪い意味ではない)。
 しかし読み終えて振り返ると、場当たり的にエピソードを並べた感じ。バランスが悪く、“伏線とその回収” にもなっていない。そういうことだったのか! と認識に快感が伴うような、フィクションとして面白い真相ではないのだ。

No.1 5点 猫サーカス
(2018/05/02 23:22登録)
この作品は、日本で将来起きるであろうテロ問題を見据えている。東京・神保町で爆弾を積んだトラックが店舗に突っ込む事件が起き、数日後、イスラム過激派組織「聖戦の兵士」によって犯行声明が出される。喫茶店を経営する元刑事の安宅が調査をはじめると、10年前に消息を絶ったジャーナリストが浮上してくる。日本社会に警鐘を鳴らす大掛かりな謀略小説としてではなく、日常生活を脅かすサスペンス小説としてテロ行為を捉えているのが新鮮。しかも男同士の友情と断絶というチャンドラーの古典「ロング・グッドバイ」の設定を借り、なおかつ1970年代のロック音楽(あふれるほど出てくる)の批評小説としての側面も盛り込んで興趣を高めている。

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