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ミステリの祭典

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葬儀屋の次の仕事
キャンピオン氏

作家 マージェリー・アリンガム
出版日2018年04月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点
(2018/06/26 12:16登録)
 初アリンガム。各人各様のルールに則ってひっそりと暮らす変人一家と、彼らを中心として寂れていったロンドンの一街区で次々と起こる、毒殺その他一連の怪事件の顛末が描かれます。
 じっくりとした筆致で書き込まれていながら最後の最後までなかなか焦点を結ばないこの作品、読み通すにはかなり覚悟が要ります。問題の葬儀屋も節々で怪しい行動は見せるものの、うなぎのような応対でなかなか尻尾を出しません。それに加えて他の登場人物たちも、独自の論理で奇矯な行動を繰り返して読者を混乱させます。
 毒殺事件の軸となる二つの要素は、いずれもヴィクトリア朝後半の風俗由来のもの。結構面白いですがやはり日本人には馴染みが薄いのが難点。これを成立させるために、わざわざ時が止まったような人物像や舞台を逆算して構築した感じです(本国では第二次大戦後の1948年刊行)。
 キャラクターそれぞれが魅力的に描写されているのに対して、メインの犯人はクライマックス以外は一筆書きでチラリと登場する程度。このことからミステリー部分は添え物で、ディケンズ風の登場人物たちを存分に味わうのが正しい読み方でしょう。それを踏まえた上で、腰を据えて読むべき小説。かなりの長編です。

No.1 5点 nukkam
(2018/04/12 08:25登録)
(ネタバレなしです) 1948年発表のアルバート・キャンピオンシリーズ第12作の本格派推理小説で、後期のシリーズ作品で活躍するルーク(本書ではロンドン警視庁分区暑の署長)が初登場します。論創社版の巻末解説で非常に適切に説明されているように「文体や表現が単純でない」「会話はちぐはぐ」「読者にとってなじみのない固有名詞がいきなり出てくる」など私には難解な作品でした。一方でミステリー雑誌「EQ」の「代表作採点簿」で「プロット」8点、「登場人物描写」9点、「読みやすさ」9点と高く評価する向きもあり、読者を選ぶ作品のようです。馬車を自動車で追跡する場面や毒殺の機会についてのキャンピオンの説明などレトロと(当時の)モダンが入り混じったような何とも不思議な印象を残します。

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