home

ミステリの祭典

login
ピカデリー・パズル

作家 ファーガス・ヒューム
出版日2017年11月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 人並由真
(2018/03/19 16:19登録)
『ピカデリーパズル』『小人が棲む室』という短めの長編二本が三本の短編『緑玉の神様と株式仲買人』『幽霊の手触り』『紅蓮のダンサー』をサンドイッチする構成。
 表題作はWEBで「この時代にこんな××トリックの趣向を…」とかなんとか話題になってました。んでもって、それはまあ分かるんですが、この作品は、むしろ<さらに古典のあの作品(非ヒューム作品)>の変奏じゃないでしょうか、とも思う(もちろん詳しくは書けんが)。

 一昨年に邦訳された連作短編集『質屋探偵ヘイガー・スタンリーの事件簿』の、良い意味でおとぎ話的なミステリの面白さが相当にツボだったので、今回も期待したヒュームですが、そっちには及ばないもののまあ悪くはなかった、それなり以上に面白かった、という印象です。
 特に『小人が棲む室』は正に、そのおとぎ話というか大昔の正統派ジュブナイルという仕上げでなんか心地よい。

No.1 6点 nukkam
(2018/03/18 22:36登録)
(ネタバレなしです) 1889年に発表された意欲作ながら「二輪馬車の秘密」(1886年)の成功には遠く及びませんでした。論創社版の巻末解説では本書を「純度の高い推理小説」として評価しています。なるほどロマンスやメロドラマの要素もありますが「二輪馬車の秘密」やウィルキー・コリンズの「月長石」(1868年)やアンナ・キャサリン・グリーンの「リーヴェンワース事件」(1878年)に比べるとその要素は抑えられ、謎解きの比重が増えたように感じられるところは当時のミステリーとしては進歩的と言えるかもしれません。新たな証言によって事件の様相が二転三転するプロットはなかなかの読み応えです。とはいえ結末が謎解き伏線を回収する推理による解決でないところは本格派推理小説としてまだまだ発展途上のレベルだと思います。

2レコード表示中です 書評