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ミステリの祭典

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サイレンス

作家 秋吉理香子
出版日2017年01月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 HORNET
(2018/09/18 19:49登録)
 本家・分家の家柄や、地元神信仰などの風習が根強く残る田舎の島に生まれ育った深雪は、ひときわ綺麗な容姿で目を引く女性だった。中学時に周りの勧めで受けたアイドルグループのオーディションで最終選考まで残った深雪だったが、昔気質の両親はそれを許さず、その時は断念せざるを得なかった。それでも夢をあきらめず、成人後に東京で芸能活動への道を進むが、旬を過ぎた深雪にはすでに入り込む隙はなく、ついに自身がアイドルになる夢をあきらめ、芸能プロダクションのマネージャーに。 そんな中で知り合った都会育ちの洗練された男性と恋に落ち、6年の付き合いを経て「両親に会ってほしい」と彼を生まれ故郷の島に連れ帰る深雪だったが―

 夢に憧れ上京するが、夢かなわず、それでも都会に生き続けようとする一女性の物語として、ミステリとしてではなく普通に楽しんで読める。
 そのまま上京&都落ちの話として結んでもよかったくらいだが、終末に向かって不穏な雰囲気が少しずつ醸成され、ミステリとして完結していた。
 改めて考えると、ちょっと背筋がゾッとするぐらいの怖さは仕組まれている。ありがちといえばありがちな路線かもしれないが、私はそれなりに楽しんで読めた。読むのにほとんど時間もかからないし。

No.1 5点 人並由真
(2018/03/19 18:36登録)
 どういう持ち技で攻めてくるか中盤でほぼ見えてしまうが、それでも読むのを止められない、じっとりとべとついた感じ。これってアルレーのBクラス作品あたりの食感に近い。
 この作者のとんがったところが無くなって、その代わりに一種の安定感が芽生えて、今はここに着地したという印象ね。
 悪くはないんだけれど、もっと振り切ったものを期待したい。

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