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ミステリの祭典

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避雷針の夏

作家 櫛木理宇
出版日2014年04月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 4点 メルカトル
(2019/06/27 22:18登録)
家庭も仕事も行きづまっていた梅宮正樹は、妻子と要介護の母を連れ、田舎町・睦間に移り住む。そこは、元殺人犯が我が物顔にのさばる一方、よそものは徹底的に虐げられる最悪の町だった。小料理屋の女将・倉本郁枝と二人の子供たちも、それ故、凄惨な仕打ちを受けていた。猛暑で死者が相次ぐ夏、積もり積もった人々の鬱憤がついに爆発する―。衝撃の暗黒小説!
『BOOK』データベースより。

只々嫌な気分になりました、又何がしたかったのかよく分かりません。その意味でジャンルはイヤミスなのかもしれません。あまりにも救いのない話だし、登場人物は結構多いですが、誰一人として感情移入の余地がありません。とにかく色々詰め込み過ぎて、各パーツが拡散しそれらが収まるべきところに収まっていないような印象を受けます。
事件らしい事件は起こりませんが、ガーゴイル像や狛犬の破壊、猫の切断死体などで読者を引き付けておいて突き放す、この手法はあまり感心しません。郁枝の夫の殺害事件の不自然なアリバイトリックも、真相は全然ミステリとして見るべきものはありません。

この作者にハズレはないと思っていましたが、今回は残念な結果に終わりました。まあ、個人的に合わなかったというだけで、こうした不安定な心情に陥りそうな作品が好きな人も意外と多いのではないかとも思いますけれど。

No.1 6点 猫サーカス
(2018/01/15 21:35登録)
主人公は要介護の母、うつ病を患う妻、そして高校生の娘と共に都会から北陸の田舎町へ越してきた。町のあちこちで陰湿な悪意がくすぶっており、よそものをいじめ、排除する村社会の姿のみならず、人々が抱える鬱屈した心理が肥大し、集団の交わりの中でおぞましい狂気へと育つ過程が見事に描かれている。これはなにも日本の地方の町ではなくとも、閉じられた封建的社会ならば、世界のどこで起きてもおかしくない出来事でしょう。夏祭りのクライマックスへ向かう展開は圧巻。

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