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ミステリの祭典

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分かったで済むなら、名探偵はいらない

作家 林泰広
出版日2017年12月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 6点 麝香福郎
(2023/02/10 19:21登録)
居酒屋「ロミオとジュリエット」で一人酒をたしなんでいる刑事が、その場で耳にした謎を解くというスタイルの連作ミステリ。
浮気夫を撲殺してしまった妻の衝動、インチキ超能力者となんちゃってサイキック・バスターの対決など、七つの謎を刑事は解く羽目になる。その謎の外観と真相との間に相当の飛躍があることが、まず本書の魅力だ。
それに加えて、居酒屋の名前でもあるシェイクスピア作品に関する七つの知識や解釈が披露され、それぞれがその名作に関する読者の思い込みを否定する妙味があり、しかもその妙味を梃子として刑事が謎を解く捻り技も披露される。不敵なエピローグも気に入った。

No.2 5点 人並由真
(2018/03/19 17:50登録)
「♪暗い闇ひきさいて~明るい光が差すように~地獄から甦る『見えない精霊』林泰広の白い牙」という感じの大復活であったが、できたものはフツーに手堅い日常の謎風な連作もの(殺人事件もあるが)であった。
 とはいえエピソード全部に一貫する「ロミオとジュリエット」のウラ読みという趣向など、ほかとはひと味違う妙な才気は今回も感じさせる。
 次回は、剛速球のトリッキィな長編を期待しています。

No.1 6点 虫暮部
(2018/02/20 10:14登録)
 通例なら“先行作品をこんなに引用するのは如何なものか”と苦言を呈するところだが、本書でことあるごとに俎上に乗せられる元ネタはシェイクスピアの、知名度は高いが実際にきちんと読むひとは意外に少なそうな代表作であって、流石にこのレヴェルのタイトルに対してネタバレ云々は野暮だろうか。
 西澤保彦(の方向性のひとつ)や蒼井上鷹あたりを私は連想したけれど、基本のアイデアもそのアイデアを具現化するためのアイデアも面白いし、連作集として一冊分の数を揃えるのは大変だったろうと思うが、説明的(安楽椅子探偵だから)でライトな文章と相俟っていまひとつインパクトに欠ける。でもまぁ、軽く読めちゃうのは必ずしも悪いことではないしね。
 表題は内容と合っていないと思う。謎を解いた後に事態を鎮静させるための名探偵の外連味の有効性、みたいな話ではない。

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