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ミステリの祭典

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過去からの声

作家 マーゴット・ベネット
出版日2017年11月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 人並由真
(2018/02/09 12:13登録)
『飛ばなかった男』から60年ぶりのこの作家の翻訳刊行。実にロマンである。

 その『飛ばなかった男』の感触から、今回もいかにも旧クライムクラブ風というかのちの日本の新本格的な内容を予期したが、実際の中身はずいぶんと違ったものだった。
 主人公であるヒロインの彼氏が殺人現場に関わった(犯人ではないらしい?)。
 じゃあ素直に警察に届けるか、いや、ちょっとの小細工でより良い結果を得られるのではないか・・・というグレーゾーンの状況の中、徐々にややこしい立場になっていく主人公の図はなかなか説得力があり、その辺は面白かった。ちょっとウールリッチ風の趣もある、ラブ・サスペンスである。
 ただまあベネットの未訳作品の残りがこのレベルなら、もうあえて紹介しなくってもいいんじゃないかとも思えたけれど。

No.1 6点 nukkam
(2017/12/30 22:32登録)
(ネタバレなしです) 本格派推理小説の名作「飛ばなかった男」(1955年)がCWA(英国推理作家協会)のゴールド・ダガー賞(当時はクロスド・レッド・ヘリング賞)の最終候補まで到達しながら惜しくも受賞を逃したベネット、次作である1958年発表の本書で見事受賞に成功します。主人公ナンシーの友人で恋愛経歴の派手なサラが婚約を伝えると同時に過去に関わった男の誰かから殺すと脅かされていると語ります。そしてサラは殺されるのですが、ナンシーの恋人でかつてサラの恋人だったドナルドが死体発見者であったことからナンシーはドナルドをかくまうために探偵役というより事後従犯的な行動に出るという、通常の謎解きプロットパターンから外れる展開を見せます。作者はナンシーのことを「親切でいて容赦がなく、高潔でいて意地が悪い」と評していますが、共感するにしろしないにしろ読者は複雑な性格のナンシーから目が離せません。ナンシーの嘘や証拠隠しのために謎解きがかなり回り道しているところは好き嫌いが分かれるでしょうけど。

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