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ミステリの祭典

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イモジェーヌに不可能なし
イモジェーヌ・マッカーサリーシリーズ

作家 シャルル・エクスブライヤ
出版日1972年05月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 7点 クリスティ再読
(2025/06/05 11:15登録)
イモジェーヌの翻訳は三冊しかないのが残念。評者は本作が一番面白かったな。

いやミステリとしてはシンプル過ぎるくらいのものだけど、イモジェーヌのドタバタっぷりに一番イヤミがない。スコットランドはキャランダーの街を分断する赤毛の猛女「火の玉イモジェーヌ」。純正スコットランド人(ハイランダー)にとっては神聖なほどの人気者、ある人にとっては疫病神。強引に周囲を振り回し、狭い街で暴れまくる....まさにマンガ的キャラクター。

というわけで、被害者筆頭はキャランダー警察の巡査部長マクロストー。それまでの2冊でも散々な目にあっているわけだが、本作ではもう大原部長的な諦念にまで至っている(苦笑)まさにイモジェーヌって女版両さんのわけ。今回はこのイモジェーヌを飼いならしてうまく捜査に活用しようと企むラガン警部が登場。イモジェーヌがたまたま目撃した、不倫密会の現場とそこで相談されていた「解放計画」の翌日、半身不随の金持ち夫人が毒殺された!

こうなったら犯人はその不倫カップルに決まっているでしょう?

さらにこの不倫カップル、イモジェーヌにしたら「イングランド人」であり、神聖なスコットランドの地を汚す侵入者の一族!!
こんなイモジェーヌに手綱をつけて、操ろうとするラガン警部の思惑の行方は?

いやはや、結末も痛烈。まさに「イモジェーヌに不可能なし」。原題と訳題が逆なのは、天晴ファインプレーだと思うよ。
(ちなみに未訳は4冊ほどあるようだが、全作タイトルが面白いので執筆順で全作紹介。「怒らないでイモジェーヌ!」「帰って来たイモジェーヌ」「またお前かイモジェーヌ?」「無理だよイモジェーヌ!」「俺たちのイモジェーヌ」「イモジェーヌの婚約」「イモジェーヌと白の未亡人」)

No.1 5点 nukkam
(2017/11/29 09:31登録)
(ネタバレなしです) 1963年発表のイモジェーヌ・マッカーサリーシリーズ第4作の本格派推理小説です。謎解きとしてはシリーズ主人公が殺人の相談を耳にするところはアガサ・クリスティーの「死との約束」(1938年)、事件の真相はやはりクリスティーの某作品を連想します。とはいえこの作者らしくパズル要素よりもユーモア、いえどたばた要素の方が強いです。但し例えばクレイグ・ライスなどは探偵活動とどたばたを上手く絡ませているのですが、本書では探偵活動と関係のないどたばた場面もかなり多いので謎解き重視派の読者の好き嫌いが分かれるかもしれません。キャランダーの町が親イモジェーヌ派と反イモジェーヌ派に分かれて喧騒を繰り広げるのがめっぽう楽しいです(もちろんイモジェーヌ自身も騒ぎを拡大させます)。ちょっと不思議なのがハヤカワポケットブック版の日本語タイトルで、仏語原題の「Imogene, vous etes impossible」(仏語独特のアクセント記号が付きます)とは逆の意味ではないでしょうか?

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