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ミステリの祭典

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パンドラ 猟奇犯罪検死官・石上妙子
藤堂比奈子シリーズ・スピンオフ

作家 内藤了
出版日2017年04月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 7点 HORNET
(2019/03/10 09:42登録)
 法医学部の大学院生・石上妙子は、警察捜査の検死にも携わる。ある日、警察で自殺とされた少女の遺体を検案したところ、遺書の一部が口腔内から発見された。些細なことと躊躇うものの、妙子は違和感を拭えず、結局そのことを進言する。
 実は同じころに少女の連続失踪事件が起きていおり、妙子の報告に注目した刑事・厚田厳夫は、妙子に捜査への協力を求める。妙子は、英国から招聘された法医昆虫学者であるサー・ジョージの力も借り、事件の謎に迫ろうとするのだが―

 「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズのスピンオフ作品ということらしい。私自身はそのシリーズを知らず、これが初読であるが。
 「ベレー帽」「画家を名乗る男」などから、大久保清事件をモデルにしてるんだよね、きっと。そんな昭和の事件の雰囲気を漂わせながら、煙草を愛飲する女子法医学生が暗躍するという疾走感のあるストーリーはなかなかに面白かった。
 色恋関連の絡み方も含め、ハードボイルドテイストの作品だと感じた。

No.1 4点 メルカトル
(2017/11/17 21:56登録)
死神女史こと石上妙子の東大法医学研究室在籍時代。若き日の彼女は法医昆虫学者で客員教授のジョージと共に、少女連続失踪事件の謎に挑む。

「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子シリーズ」のスピンオフ作品です。シリーズを読破した読者にしか分からない、若き日の石上妙子のこれまで明らかにされていなかった謎の部分が公になり、コアなファンはスッキリしたと思います。が、作品の出来はイマイチと感じました。
本作の一番の読みどころは石上の生き様でしょうか。彼女の内面を鋭く抉る描写は確かに読み応えがあります。そして興味深いのは、人間の死体に群がるシデムシの生態ですね。シデムシの母虫は幼虫を給餌して子供を育てるが、餌が無くなると子供を食い殺してしまうという、なんとも無慈悲で合理的な自然の法則は、読んでいて辟易とします。
しかし、肝心の少女連続殺人の犯人は【主な登場人物】を見ればほぼ分かってしまいますし、動機が謎のまま残ります。これはいかんでしょう。そしてもう一つの謎も謎のままです。パンドラの甕を空けたら最後に残ったのは希望ではなく謎だったではシャレになりません。これでは消化不良に終わるのは当然です。なぜAmazonであれほど高評価なのか私には理解できませんでした。
畢竟この小説は、石上妙子というキャラの魅力を楽しむための本だということなのだと思います。

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