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ミステリの祭典

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義経号、北溟を疾る

作家 辻真先
出版日2017年06月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 zuso
(2022/10/17 23:01登録)
明治天皇を乗せた蒸気機関車を巡る冒険小説。
予定に反して夜汽車になってしまったという史実を活かし、そこに新選組の残党や清水次郎長の子分、あるいは狼に育てられた少女を配置して列車襲撃の攻防を描き、さらに不可能犯罪の謎解きを加える。キャラクターもいいし疾走感もいい。北の大地を轟音とともに疾る蒸気機関車の迫力は、ベテラン鉄道マニアの作者ならでは。

No.1 7点 人並由真
(2017/11/16 02:02登録)
(ネタバレなし)
時は明治14年。明治天皇の北海道への来道が迫るなか、現地の北海道では、大開拓使・黒田清隆への遺恨に端を発するお召列車の運行妨害計画が取りざたされる。明治政府の三代目大警視(初代・警視総監)樺山資紀は藤田五郎(旧名・斎藤一)と、元・清水次郎長一家の法印大五郎を探索のため北海道に派遣した。だがそこで二人が認めたのは、先に起きた謎の密室ともいえる状況のなかでの怪死だった。

 文庫オリジナルで刊行された辻真先、今年の新刊。長年付き合った主要なシリーズキャラクターに決着をつけた昨年の長編『残照』が最後の著作になるんじゃないかなと何となく思っていたら、本年もまたこんな力作を書下ろしで出した。
 
 内容は、山田風太郎が70年代に執筆した秀作『地の果ての獄』を思わせる、北海道を舞台にした明治もの。しかも記憶するかぎり、たぶんそっち(『地の果ての獄』)よりも実在人物を取りそろえたオールスターもの的な外連味は豊かな上、お得意の鉄道ネタを主軸にした陰謀活劇、さらにちょっとややこしい(でもないか?)の状況で発生した不可能犯罪の謎解きと、とにかく読者を楽しませんとするサービス精神にあふれて全500ページ強。
 歴史時代小説・活劇謀略もの・謎解きミステリの興味が実にうまく融合して、とても面白かった。
 辻作品は二十~三十冊くらいしか読んでないけれど、これは自分が出会った作品の中でも上位に来る完成度じゃないかと。
 辻センセは、当年お年85歳。なんかこうなるとまだまだ行けそうで、改めて大したヒトである。

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