その犬の歩むところ |
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作家 | ボストン・テラン |
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出版日 | 2017年06月 |
平均点 | 6.50点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 6点 | YMY | |
(2022/05/03 23:43登録) 人間の善意と愛を最もよく理解する犬が、様々な人々の魂を生き返らせる物語。 孤独の闇の中にいて気付かずにいた他者の思いに触れ、忘れていた夢・新たな夢を抱かせてくれる。犬と"悲しみとさよならの川"を遡りながらも、それでも生きる喜びがあることをたっぷりと教えてくれる。 相変わらず作者の文章は詩的で力強く、読む者の心を何度も揺さぶる。 |
No.1 | 7点 | 猫サーカス | |
(2017/09/01 21:38登録) 犬好きの方はもちろん、そうでない方にもぜひ読んでいただきたい小説。この作品の主人公はギヴという名の犬。本書はギヴの生い立ちを、そして長い旅路を描いている。ギヴは生まれ育った地を離れ、出会った人々に寄り添って旅を続ける。土地から土地へ、人から人へ。ギヴの旅から浮かび上がるのは、過酷な出来事に満ちた世界と、その中で希望をつかみ取ろうとする人々の姿。ギヴの旅するアメリカは、つらい出来事でありふれている。テロ、戦争、自然災害。大きな事件だけではない。身近な人々の間に渦巻く愛憎もまた、悲劇をもたらす。だが悲嘆を煽るだけの小説ではない。そんな境遇でなお、良心を、あるいは誇りを忘れない人々の姿を描いている。過酷な出来事が幾つも起きるけれど、優しさに満ちた、心温まる物語である。脇役ひとりひとりの姿も心に残る、丁寧に組み立てられた小説。詩情あふれる語り口も忘れがたい。読む事自体がが快楽であり潤い、そんな一冊。 |