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ミステリの祭典

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きみの友だち

作家 重松清
出版日2005年10月
平均点8.00点
書評数2人

No.2 9点 take5
(2024/04/28 18:17登録)
短編が最終話に向けて収束していく様
どれもが不可欠で落涙必至、見事です。
主人公達の小学生から大人までの時間
どの作品を読んでもその時間の流れが
厳しくて、切なくて、そして優しくて、
重松清は然るべき頃にこそ出会うべき
稀有な作家さんと私見ですが思います。
それぞれの作品は「きみ」を見つめる
誰かによって紡がれているわけですが、
その誰かの眼差しを借りて、私たちも
また各人と共に主人公と出会うという
構造になっています。私にはこの事が
重要だと感じます。それは読書を終え
この現実社会を一人称で見つめる時に
自身が身近な家族や友達をどう捉えて
向き合っているか、それを否が応でも
突き付けられるからです。千羽鶴なら
自分のために折っていると気付かされ
この読書が自分のために生かされる様
これからが問われるのだと気付きます。

No.1 7点 メルカトル
(2017/07/21 22:28登録)
交通事故で一生松葉杖を手放せない身体になってしまった恵美ちゃんと、生まれつき腎臓が悪く、学校を休みがちな由香ちゃん。二人はある事件を境にクラスの誰とも付き合わない無二の親友になる。彼女らを中心に周りの関係者一人ひとりにスポットを当てて、描かれる青春群像劇。というか、連作短編集或いは連作長編。
目が痛いです。泣きすぎて。特に『花いちもんめ』はいけません、恵美ちゃんと由香ちゃんの友情と最後の別れ。これを涙なくして読める人がいるのでしょうか。いや、絶対いませんよ。
時系列がバラバラですが、人間関係が分かりやすいので混乱することはありません。
例えば中学校のサッカー部の3年生で、だけどサッカーが下手で補欠、女の子にも縁がなくてバレンタインのチョコレートを貰ったこともない。そんな冴えない男子を主役にして切ない短編を淡々と描いてしまう、作者の力量は相当なものがあると思います。私はこの作家は初ですが、これまで読んでこなかったことを恥じるくらいの素晴らしい作家なのかもしれません。
最終話以外、主人公のことを「きみ」と呼んでおり、では果たして誰がそう呼んでいるのかが、この作品に仕掛けられた最大の謎です。その点だけはミステリっぽいと思うのですが、その謎は最終話で明らかになります。蛇足と言う人もいますが、決してそんなことはない、ほのぼのとした味のある締めくくりだと思います。

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