モノグラム殺人事件 エルキュール・ポアロシリーズ |
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作家 | ソフィー・ハナ |
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出版日 | 2016年09月 |
平均点 | 5.00点 |
書評数 | 2人 |
No.2 | 5点 | E-BANKER | |
(2021/07/01 20:52登録) クリスティの孫も「公認」したポワロシリーズの続編としての位置付けである本作。 出版社が白羽の矢を立てたソフィー・ハナは9冊のミステリーを上梓している現代英国の有名作家(とのこと) 2014年の発表。 ~名探偵エルキュール・ポワロはお気に入りの珈琲館で夕べのひと時を過ごしていた。灰色の脳細胞の束の間の休息。そこへひとりの半狂乱の女が駆け込んできた。どうやら誰かに追われているようだ。ポワロが事情を尋ねると意外な言葉が。彼女は「殺される予定」というのだ。しかも、その女はそれは当然の報いであり殺されたとしても決して捜査しないでと懇願し、夜の街へと姿を消した。同じ頃、ロンドンの一流ホテルで三人の男女が殺害された。すべての死体の口にはモノグラム付のカフスボタンが入れられていた!~ 本作。プロットがかなり錯綜している。 いや「錯綜」というよりは「混乱」と言う方がいいのか。巻末解説者はE.クリスピンの言葉を引用してクリスティの良さを「簡潔平明さ」と評されており、同時に本作には致命的にそれが欠けていることを残念がられている。 これは・・・そのとおり。 本作のポワロは原典以上に人が悪い。今回の相棒となるスコットランドヤードの若き刑事キャッチプールの指導のためと称して、事件の真相をなかなか詳らかにしないどころか、彼の推理力を試すかのように意味不明な言動を行っていく。 「高級ホテルで起こる三人の殺人事件」⇒「動機をめぐり英国の小村での困難な捜査」⇒「浮かび上がる過去の事件に纏わる動機」という、冒頭から中盤までの展開はまだ良かった。 ただ、例えば魅力的な物証(モノグラム付のカフスボタンやきれいに整頓された死体)も結局ダイレクトには真相と結びついておらず、どうにも「クリスティらしく飾っただけ」という印象が拭えない。 それと、そう。楽しくないのだ。読んでて。 それが一番の不満点かな。 やっぱり、クリスティは偉大だった! そのことをなお一層意識させられたのが、一番の収穫ということかな。まだ未読作品はあるのだから、素直にクリスティの作品を手に取ればいいのだ。 |
No.1 | 5点 | nukkam | |
(2017/07/15 03:15登録) (ネタバレなしです) サイコ・スリラーの書き手である英国の女性作家ソフィー・ハナ(1971年生まれ)が2014年に発表した本書はあのアガサ・クリスティー(1890-1976)の名探偵エルキュール・ポアロシリーズの「公認続編」として注目を集めた本格派推理小説で、英米などで大ヒットしたそうです。クリスティーは他人による贋作など「望まなかったと思われる」というハヤカワ文庫版の巻末解説のコメントはもっともでしょうし、本書を読んだ私のことも「クリスティーファン読者とは認めません」と天国のクリスティーから叱られそうな気がしますけど。「殺される罰を受けなければいけない」と語る謎の女性とポアロの出会い、それに続くホテルでの三重死事件と派手に幕開けしますが、その後の展開はちぐはぐで回りくどい会話が連続してテンポが重いです。ポアロの真相説明であまりにも多くの嘘で塗り固められていたことがわかり、これはとても読者が完全正解できるような謎解きとは思えませんでした。 |