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ミステリの祭典

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雪盲
ダーク・アイスランドシリーズ

作家 ラグナル・ヨナソン
出版日2017年05月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 斎藤警部
(2017/08/30 12:33登録)
♪ あれからニシンは 何処へ行ったやら。。 金融破綻後のアイスランド、人口千人ちょっとの海沿いの街。名士である老作家は劇団主幹。公演を直前に控えたある日、階段から転げ落ち死亡。。。。

文庫帯の惹句『アイスランド、ヤバい!』はなかなか唆る。実際読んでみると良い意味で普通に共感出来るほのぼのした味わいが強い。しかし巧みな複雑構成(事件は一つ二つじゃない!)と斬れの良い叙述操作で読者牽引力はハイエンド。そして人間関係の描写がヴィヴィッド。主人公刑事アリ=ソウルは人口十二万の大都会レイキャビクからの新参者だ。まあ、序盤~中盤に強く引き込まれる割に、結末がちょっとなあ。。意外性も(ミステリ的な)深みも、惜しい所で肩透かしからの空回り。それでも読んで愉しかったんだよ。

かの国と言えば、やはり白夜の温泉でシガー・ロスを流しながら朝まで読書、みたいなステレオタイプのイメージに引き摺られますが、少なくとも「世界で最も読書する国民」というのは事実であるらしきニュアンス、文章の端々からそれとなく伝わるのは素敵です。

日本の残暑厳しき折こそ、冷ンゃりした冬季アイスランド・ミステリがよくハマる。あなたも、如何です?

No.1 6点 nukkam
(2017/06/11 01:48登録)
(ネタバレなしです) アイスランドの弁護士兼作家であるラグナル・ヨナソン(1976年生まれ)のダーク・アイスランドシリーズ第1作である2010年発表の本格派推理小説です。原作は当然アイスランド語で書かれてますが海外向けに翻訳された版が出回って各国で好評、日本でも英訳版からの翻訳で読めるようになりました。余談ですが主人公のアリ=ソウル(本書では24歳の新米警官)の登場する作品にはダーク・アイスランドシリーズに属しない作品もあるそうです。さて本書は玄関に鍵をかけないのが日常の静かな漁師町シグルフィヨルズルに警官として採用され、よそ者(首都レイキャヴィークから移住)であることを意識せざるを得ないアリ=ソウルが描かれます。文章は簡潔にして要を得ており、人物描写にも配慮されていて謎解きだけでなく人間ドラマとしても充実しています。これで厳しい冬の描写に(オーストラリアの)アーサー・アップフィールドのような雄大なスケール感があればなあと思いましたがこれはぜいたくな注文でしょうね。もうひとつ余談ですが本書の小学館文庫版の巻末解説で作者のことを(男性作家なのに)「アイスランドのアガサ・クリスティ」と紹介していますが、細かい伏線を張ってある本格派推理小説であるところは共通していますが内面描写の多い本書の個性はクリスティの作風とはかなり異なるように感じました。

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