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ミステリの祭典

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確信犯

作家 大門剛明
出版日2010年07月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 猫サーカス
(2018/03/19 19:19登録)
司法界の格差問題をテーマに、ミステリアスな事件を見事に描きあげている。広島で起きた、ある殺人事件に対し、無罪判決が下された。ところが14年後にその元被告が「犯人は自分だ」と告白し、その直後、事件を担当していた裁判長が殺されてしまった。はたして被害者の息子による「確信犯」的凶行なのか。裁判に関わった二人の判事や容疑者の恋人など、多視点で展開していく本作は、単なる犯人捜しで終わらず、人間ドラマの妙でぐいぐいと読ませていく。それぞれの複雑な思いが交錯したまま、新たな事件が巻き起こっていくからだ。そのほか、法廷内だけではなく、広島の野球スタジアムが舞台だったり、司法改革の問題に切り込んでいたりするなど、物語に広がりや深みが感じられる。最後に待ち受けているのは驚愕の真実で、巧みな仕掛けに驚かされた。

No.1 5点
(2017/05/19 22:30登録)
現代司法の問題点をからめた基本的なプロットはなかなかよかったですし、プロローグの意味を明かすエピローグもなるほどと思わせられます。途中で思いがけない展開を見せて登場人物の役割を急変させてくれる部分は、『雪冤』ほど効果的ではありませんが、この作者らしい発想だと思います。また、ある登場人物の成長物語として読んでもおもしろいかもしれません。
しかしこの作者、証拠不十分だけれども心証はクロで、実際10年以上経って有罪の証拠が出てくる被告人に無罪の判決を下した場合、その判事は判事失格であり、また一般人も当然そう感じるはずだ、と本当に思っているのでしょうか? 証拠不十分のまま起訴したりしたら、それは明らかに検察の失態でしょう。逆に証拠不十分だが心証はクロだという理由だけで有罪との判決をすれば、それこそ文句なしに判事失格だと思うのですが。

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