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ミステリの祭典

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空っぽの罐
ペリイ・メイスン 別題「空っぽの缶」

作家 E・S・ガードナー
出版日1960年01月
平均点5.00点
書評数2人

No.2 5点 弾十六
(2018/11/21 05:39登録)
ペリーファン評価★★★★☆
ペリー メイスン第19話。1941年10月出版。HPBで読了。
冒頭は中年主婦の家庭の悩みが語られ、全然ワクワクしません。メイスンは第三章(p23)から登場。舞台はロスアンジェルスとサンフランシスコ。依頼が普段とは全然違うのがユニーク。支那と日本の戦争が遠景にあり、支那人の召使い、名前はガウ ルーン(Gow Loong 広東語「九竜」)で正しい音訳のようです。(作者は中国人と交流あり) メイスンの好みはオルガン曲かハワイアンミュージック。ドレイクはメイスンにスカされおかんむり、酔い覚まし炭酸(Bromo-Seltzer)をガブ飲みします。メイスンとデラはS.F.に飛んで、おふざけから無茶な大冒険に発展、口から出まかせ出たとこ勝負のお芝居で何とか危機を切り抜けます。(個人的にはここが一番の見どころ) トラッグ視点の記述が丸ごと一章分あります(第11章)が、活躍は地味です。
いつもの込み入った筋で、スリリングな展開が楽しめますが、全体的にバラけた印象、上手く絵が仕上がらない感じです。(そもそも罐の謎が、それめんどくさすぎでは?なので…)
ではトリヴィアです。
銃は銀色のピストル(revolver)、短い鈍色の自動拳銃(a grim snub-nosed revolver)、38口径のピストル(.38 caliber revolver)が登場。いずれもメーカー等詳細不明です。リボルバー(回転式拳銃)を自動拳銃(これだとsemi-automatic pistolの意味になってしまいます)とか単にピストルと訳すのはいただけません。
p12 洗濯ものを絞り器(mangle)に…: 圧縮ローラー式のやつです。
p13 Webster's Collegiate Dictionary 5th edition(1936)は当時の最新版。「新聞のクロスワードに必要な言葉はみんなはいっているはずよ」クロスワードは、その発明(1913)以来30年程は辞書の定義をそのままカギに使うという暗黙の了解があり辞書は大変な売れ行きだった(遠山顕2002)
p14 [靴下の]中にカガリ玉(darning egg)を入れて…: 私は初めて知りました。
p53 「本で」メイスンの活躍を読んだ、と訳されていますが、原文では単にread aboutなので、新聞とかで有名なのでしょう。
p71 口述録音機(dictating machine)はディスク式の発明(1945)まで記録メディアは蝋管。(と言うことは「あの作品」も蝋管ですね)ガードナーは1933年ごろから全て口述録音。
p180「やなにーも」(maskee) 支那人の召使いが使うピジン英語。
p220 冷蔵庫は、電気製品だった。(The icebox was electric) 完全には普及していない時代です。
デラが先導したメイスンとの乾杯は「犯罪事件に!」(Here's to crime)
ところで、トラッグの「弟」が出てきますが、原文はa brother、年齢の上下は不明です。

<意味不明なので原文を解釈>
p238のメイスンとデラの会話がちょっと…
単なるアクセサリーになろうとしたら、[秘書は]アマチュア資格を喪失する(becomes an accessory, she loses her amateur status): 試訳「共犯者になっちゃったら、シロではなくなるね」
アクセサリーって?(What's an accessory?): 「共犯者?」
賭場の見張り女のことさ(A moll who cases the joint): 「見張り役の女(スケ)」(p214のことなので隠語っぽく訳すのがいいでしょう)

No.1 5点 nukkam
(2017/04/22 23:10登録)
(ネタバレなしです) 1941年発表のペリー・メイスンシリーズ第19作の本格派推理小説です。もともとスピーディーな展開でサスペンス豊かなのはこのシリーズの特色ですが本書の場合は同じサスペンスといってもかなり異色の部類です。何が待ち構えているかわからない場所へ乗り込むメイスンを描いた第8章や第15章はどちらかといえば冒険スリラー的などきどき感を生み出しています。その15章でのデラの「悪人の陰語」に1番びっくりしました。

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