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ミステリの祭典

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裏切りの晩餐

作家 オレン・スタインハウアー
出版日2016年04月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 小原庄助
(2017/08/13 09:57登録)
テロ事件の真相をめぐる駆け引きを描いたスパイ小説で物語の大部分は、あるレストランのテーブルで展開する。
CIAを去ったシーリアは元恋人のヘンリーと再会し、レストランで食事を共にする。
席上の話題は、かつて2人が関わったハイジャック事件へ。
CIAから犯人に情報が洩れ、大惨事へとつながった真相をめぐり、2人の会話は息詰まる駆け引きを見せる。
2人の視点での語りが交互に現れ、それぞれが抱く複雑な思いが、そしてたくらみが徐々に浮かび上がる。
ディナーの席で繰り広げられる心理戦。
イスラム過激派のテロを背景に、諜報の世界に生きる人々の張り詰めた心情が描かれており、意外な結末に驚かされる。

No.1 6点 人並由真
(2017/02/18 11:53登録)
 2012年のカリフォルニア。以前にCIAウィーン支局の辣腕エージェントだったシーリア・ハリソンは現在は引退し、二児の母となっていた。そこにかつての同僚で恋人でもあったCIA局員ヘンリー・ぺラムが現れ、彼女を夕飯に誘う。やがてヘンリーの話題は、かつて2006年にウィーン国際空港で生じた、ウィーン支局にとっても痛恨の惨劇であった、ハイジャック事件に及んでいく…。

 久々に現代のエスピオナージュを読みたくなって、手に取った一冊。作者スタインハウアーはすでに連作スパイ小説「ツーリスト」シリーズ(ハヤカワNV文庫)などでの邦訳もあるようだが、自分は今回が初めての出会いだった。ちなみに本書はノンシリーズの単発編。

 2006年のウィーン空港で起きた、中東系のテロリスト一味によるハイジャック事件。そこで結果的に百人以上の被害が生じた現実が語られたのち、細かい部分で、そして表面的な事態の裏で、何があったのか? のホワットダニットの興味に物語はなだれ込んで行く。
 
 リアルタイムではわずか数時間の、一場面ものの舞台劇的な物語。しかし二人の主人公ヘンリーとシーリアが章ごとに語り手として交代する内容は、事件以前の、さらにはつい最近の時制の、さまざまな回想へと自在に及び、ストーリーの枠組みを広げていく。
 読み終えて見ると存外シンプルな物語という印象もあるが、裏の世界に生きる者のしたたかさと切なさ、個人と組織の相関(本書の場合は組織というより、惨劇となった事態の方か)などはしっかり語られており、小味ながらちょっと心に残るエスピオナージュの佳作~秀作には出会えたという気分。

 一カ所だけ不満は、本書の序盤である作中人物にレイ・デントンなど古くてわかりやすいという、それは違うでしょ、という主旨の感想を言わせていることかな(苦笑)。いやまあ、ある種の諧謔かもしれないけれど。

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