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ミステリの祭典

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レジまでの推理 本屋さんの名探偵

作家 似鳥鶏
出版日2016年01月
平均点4.50点
書評数2人

No.2 4点 まさむね
(2017/10/08 09:37登録)
 西船橋の書店を舞台とした連作短編集。
 個々の短編としては、正直「そこまでやる意味、ある?」とか「そこまではしないでしょ、普通」等々、思ってしまったのですよねぇ。
 一方で、最終話の仕掛けは、決して嫌いではないし、連作短編として巧くまとめていらっしゃると思います。織り込ませている主張にも、同意いたします。
 うーん、でもねぇ…残念ながらその主張は、作品全体を包んでいるというよりも、むしろ邪魔をしている側面も少なからずあると思うのです。総合的に、敢えてこの採点で。

No.1 5点 人並由真
(2017/02/16 16:39登録)
(ネタバレなし)
 西船橋にあるその書店の女性店長は、個性的で印象的な販促ポップを作るのが得意で大好き。彼女がポップを作って推薦した本は常に完売し、そのためこの店長は「西船橋のポップ姫」の勇名で斯界に知られていた。だがその業務は一見するとマイペースのきわみで、それゆえバイト大学生の青井が同期や後輩のバイト仲間をまとめ、彼の方がともすれば店長に見えるほどだった。だがそんな書店の周辺では、時たま奇妙な事件が生じ……。

 21世紀現代の市井の書店を舞台にした、お仕事もの&日常の謎系の、計4本の連作中編集。第1話が、恋人から送られてきた一見無節操な本の組み合わせから、そこに隠されたメッセージを探るもの、第2話が貴重なサイン本の消失事件、第3話が一種の密室状況での店内のポスター落書き事件、…というもの。それなりにバラエティ感のある内容が「日常のもの」分野としては、それぞれなかなかトリッキィな手際で楽しめる。作品の設定にちなんで書物や作家全般や書店の内情についての言及があり、さらに、青井の職場仲間の一部愉快な変人っぽいキャラで笑わせるのもいい。

 それで最後の第4話。本書の連作の通底にある現実的メッセージをここでいっきにシビアに語り、しかしある大仕掛けのもと、そんな物語の流れの上で、きちんと読者を饗応するエンターテインメントに最後の最後には切り返す。
 これぞ大人の芸! …ではあるのだが、それでもどうしてもこの最終話だけは異物感が強いんだよね。いや、この最後の一本で作品全体を格上げし、テーマ的にも整合させてあるのはわかるんだけど、なんつーか、甘いお菓子(口当たりのいい日常ミステリ)のなかにニンジンやピーマン(リアルな問題テーマ)を刻んで忍ばせるテクニックを見事やりとげたクッキングママさんのドヤ顔的な、作者のニコニコスマイルが優先的に目に浮かんでくるようで。
 まあツイッターとかを見ると、素でこの最終編で感銘している人も多いみたいだし、オレの場合は、こういう感想もあるんだな、という感じで読んでください。

 あとがきに註釈に、と作者らしいいつもの饒舌は楽しめた。

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