home

ミステリの祭典

login
失われた男

作家 ジム・トンプスン
出版日2006年06月
平均点8.00点
書評数2人

No.2 9点 YMY
(2022/05/18 23:02登録)
人間の暗い深淵を描き出すノワールでありながら、作者はミステリとしての超絶の罠を読者に仕掛ける。二つの異なった方向性を結び付けてみせる強引さに、作者のしたたかさを見た気がする。
ほのかな希望を感じさせるエンディングで、さらに読者の意表を突くあたりも憎らしい。

No.1 7点 tider-tiger
(2016/12/18 16:37登録)
町の新聞社に勤めるブラウンは、頭も切れ、自信満々コラムを書きながら、詩作にいそしむ男。だが、なにやら秘密をかかえているらしい。そんな彼の日常を大きく変える女たちが登場する。出奔して娼婦となった妻、美しい未亡人、そして都会からの意外な訪問者―突然暴力を爆発させ、非道な犯罪を重ねていくブラウン。しかし、世間を揺るがす巧緻な殺人劇は、予想もしない罠に飲みこまれていく… ~amazonより~

最初のうちは、まとまりはいいけど、(トンプスンにしては)こぢんまりとした作品になりそうだなと思っていました。ただ、読んでいてなにか妙な違和感がつきまとう。その違和感が……本作はかなりの変化球です。ノワールとはいえどもミステリ的な要素を備えており、細かい辻褄合わせなどにも気を配っているようなのですが、なんかそんなことはどうでも良くて、トンプスンはこんなこともやっていたのかと驚かされた。ぶっ飛んでいるけど、そのぶっ飛び具合があまりトンプスンらしくはないように思えました。いや、トンプスンらしいのか? なんか釈然としない気持ちの悪い読後感。かなりの問題作。
パロディ、コメディ、ノワール、メタミステリ、どの読み方が正しいのか、どれも正しいのか、何もかもが違うのか、傑作なのか駄作なのか、俺にはわからねえよお。
最初に読むトンプスン作品としては適当ではありませんが、他の作品を読んで気に入った方には是非とも手を出してみて欲しい作品です。てか、他の方の感想を聞いてみたい。
特に『内なる殺人者』(私が持っているのは1990年発行の河出文庫版 扶桑社の現行版は「俺の中の殺し屋」と改題)の後に読むことをお薦めします。

2レコード表示中です 書評